きばらし(晴れない) 打ち合わせが難航したので、俺は気分転換として散歩に出ようしたのだが、何故か彼も付いてきた。仕事はいいのかと問えば、「ここからはデートだろ」と返してきてむず痒い。却って不安でそれどころではなくなる。このままでいいのかと。道中何かの折にうっかり拗ねてしまった。
「どうせ今だけだろ。いずれお前さんも偉くなっていく」
「それはたぶんそうだが、俺達当人同士としてはずっと一緒だから安心していい、だろ? ハニー?」
唖然として、苦し紛れに絞り出すのがやっとだった。
「い、生きてる人間がそんなこと言うかね」
「事実は小説より奇なり、ってやつだ。ここが往来でなければ抱きしめてた」
何かが木っ端微塵になったようだ。