手つかずとして手つかずとして
「ああもう、なーんも出ねえ」奴がそうぼやいて俺の前で机に突っ伏す毎週木曜日。文芸部の課題発表と締切が金曜にあってもはや恒例だ。最初こそあれこれヒントっぽい言葉を列挙してみてやるが、翌朝にはしれっと「ちょっとこれ読んでみて」と、それなりな作品を寄越してくるから今は言うのをやめた。俺は部外者だし、小説とか詳しくないので、パクリとかAIとかについては分からない。まあ盗作したら追い出されるだろうから、きっとそうでは無いのだろう。それにしても、弱音だとか一番に読ませるとか、こいつにとっての俺とは一体、という方面に気を取られてしまっている。これは聞かないでおくのが互いの為か。
「まあいーんじゃねーの」