イナナとエビフでアン神がエビフ山を語るとこイナナとエビフ 一一六行から一二九行
イナナ日女命、御嶽を覆さざるを得ずと奉し給ひきときにアン大御神思し悩み給ひきて作りませる御歌
北狄には群山あれど とりよろう御嶽エビフ
百敷の天つ宮まで 高照らす岳の届くと
高敷かす天の御空に 神づまり領き坐す
百千足る大國御霊
諸神の怯ゆるまでに
百木なし山も木高し
秋されば岡辺も繁に 咲み木垂る生り物総む
山の端に鹿猪も多なり
山の際に獅子も和らぐ
春されば山もとどろに さ雄鹿は妻呼び響む
巌には花咲きををり
貌鳥は間なく数鳴く
畏こ山ぞ 汝妹な征きそ
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イナナ女神がエビフ山を滅ぼすと宣言なさったときにアン大神が思い悩んで作られた歌
スビル地方には多くの山があるというが、その中でもすべてが備わったエビフ山は、広い天の宮殿までその輝きが届くのだと、(アン大神の)治める天の空に住んでいる百も千も数えるという多くの神々、アヌンナが怖れるほどに、多くの木が茂る高い山であるよ。
秋になれば山の辺には鈴なりの果物で埋まり、山の端には動物たちが多く住んでいる。山の際には獅子も休んでいる。
春になれば山が轟くかのように、鹿たちの恋の歌が響く。岩の上には花が咲き、鳥たちが絶え間なく鳴くことだ。
恐ろしい山であるぞ。イナナよ、我が愛子よ、どうか争ってくれるな。