ほころびなぞりて、日々「こはくくんってさ、絶対スパダリだよ! 彼氏にしたらすごく大切にしてくれそうじゃない?」
そんな会話を、自分より二組ほど前に並んでいる女子高生たちが繰り広げている。こはくは目深にかぶった帽子の下で静かに息を潜めている。何気なくしていれば、案外気が付かれないものなのだ。
「えーっ、そうかなぁ? なんか結構厳しそうじゃない? 落ち込んでるときとかガツンと正論言ってきそう」
「そんなことしないよ! こはくくんはね、全部優しく包み込んで『そやね、そらつらかったなぁ』って慰めてくれるんだって!」
「あんたこはくくんの何を知ってるのよ」
その先の会話を聞くことはなく、こはくは手元のスマホに素早く『スパダリ』と入力した。検索結果が示す内容を読み込んでいくと、段々と黒いマスクの下は苦笑の形に変わっていく。
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