ロンルフ△月×日
料理の腕がもとに戻ってしまった。
咀嚼した団子は、作ったルフレ自身にはわからないが鋼の味がする。
では鋼の味がわからないと言うのであれば、その舌はどんな味を受け止めているのかと問われても、やはり彼女にはわからない。それでもいま食べている団子が特段おいしいものではないことはルフレにとっても明らかだった。
彼女が周囲を見やればクロムとフレデリクが何やら会話をしている。内容は周囲の状況報告だろう。
聖王によるイーリス領内の視察という建前のもと、聖王であるクロムも含めた自警団がイーリス領内を巡回していたところ、村の近くに屍兵が出現したという情報が舞い込んだのが今回の戦闘の発端だった。
かつての邪竜との戦いを経験した者たちからすれば、姿を現した屍兵はたいした驚異ではなかった。それでも命のやりとりであることに変わりはなく、油断があろうとなかろうと命を落とし得るのが戦場だと気を引き締めて臨んだ。なにより、屍兵を放っておけば、そこに住む人々に被害が及ぶ。そんなことは絶対にあってはならないと、気合い十分な自警団の面々により屍兵は無事討伐された。
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