声が聞こえた。何を言っているのか拾い上げようと、散らばっていた意識が集まり始める。まだこの海で揺蕩っていたいのに。
しぶしふとまぶたを半分持ち上げると、寝台の半分を分け与えた友人が楽しげに独り言を垂れ流しているのが見えた。
「カール」
寝ているのだから静かにしてくれと抗議したつもりだった。
「おや、獣殿。目を覚ましたのですか」
わざとらしさを感じる微笑みを浮かべて、つらつらと話しかけてくる友人に、ラインハルトは手を伸ばした。ぐいと引き寄せて、友人の額にキスをする。
友人は大きく目を見開いたまま固まった。
静かになったのを良いことに、そのまま抱き寄せて、こどもを寝かしつけるように友人の腹の上に添えた手でとんとんとあやす。
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