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    s_toukouyou

    @s_toukouyou

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    s_toukouyou

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     びゅうびゅうと風が吹いている。がたがたと窓が鳴っている。こういう夜を嵐の夜と呼ぶのだという。
     寝台の上でシーツを頭からかぶって、両手を窓に押し当てて、外をのぞきみる。星のない空が妙に居心地が悪い。轟音。それに続いて天を切り裂いて地を穿つ雷光を見た。
     ぴゃっと跳びあがって、シーツを深くかぶりなおす。くすくすと笑う声が背後から聞こえて、恐る恐る振り返った。暗闇の中でもまばゆい男が立っている。
    「怖いか」
     少しだけ、とちいさくうなずくと、養父が蓮のそばに座った。
    「そう、怖がる必要もないと思うのだがな」
     笑みを含んだ声音でからかいつつ、親指の先で蓮の頬を撫でる。
     ううん、と蓮は言われた内容について首をひねった。よくよく考えてみれば、あれよりもっと怖いものを知っている。フラスコのガラス越しに見た光がまぶたの裏を焼く。
    「そうだった、あんたのほうがもっと怖い」
    「ふ、あっはっはっはっはっ!」
     一瞬虚を突かれたような反応のあとに、珍しいことに養父は口を開けて笑った。
     蓮を抱き上げて、寝かしつける。添い寝をしてくれる養父を見上げると、噛み殺しきれない笑みを目元に残していた。
    「ふふふ、そうか、私が一番怖いか。であれば、怖いことがあったら私のもとにおいで。なに、この世に私の腕の中以上に安全な場所などない」
     一定のリズムでゆるやかに背をたたく養父の手に、自然とまぶたが重くなる。
     うんと素直にうなずくと、養父はなにが面白いのか、やっぱりくすくすとずっと笑っていた。
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