駆け寄ってきた子供を抱き上げようとしたラインハルトは、ふと何かに気が付いた様子で子供の首根っこをつかんで持ち上げるほうに切り替えた。
母猫に持ち上げられている子猫のように、ぷらんと子供が足を揺らす。
子供の目をのぞき込むと、星々をちりばめたような宙が広がる。
ラインハルトは無言で、もう片方の手でばしっと子供の背をたたいた。
「おわっ」
びっくりした様子でぱちぱちとまばたく子供の目は、普段とおなじ色に戻っていた。
子供は状況を把握できていない様子で、戸惑っている。うっかり寝てしまった、とでも思っているのだろう。
「次に会うのは約束が果たされるとき、ではなかったかな」
「なに?」
「いいや、なんでもない。おやつにするか、蓮」
「うん」