本物と本物「いやぁ~まさか本当にあの夫婦のコスプレが出来るなんてねぇ……」
「いや、本当にだよ。許可なんて得られるとは思わなかったから。」
今日は年に一度の龍門で行われる祭り、『龍門建国祭り』である。
この祭りは名の通り龍門が出来たことを祝う祭り。龍門の中で一番の祭りとなっており観光客も多い。
そして祭りなのでコスプレする人も多い。私たち二人もその人たちなのだ。そして私たちがコスプレしているのはあの龍門総督の「ウェイ・イェンウ」とその妻「ウェイ・フミヅキ」である。
「いつかあの二人のコスプレをしてみたいと思ってたけど…まさか…夢みたいだよ…」
「さすがに無許可でやるのはダメだからダメもとで電話してみたけど、まさか秒で許可を得るなんてね…しかも電話に出たのはまさかの本人様!耳元であの声を聴いてしまったのはもう一生忘れないね。」
「もうずっと言ってるよね。だから本気にならないとって言ってこれまでのコスプレの中でも一番力入れてたもんね。」
「そりゃそうでしょ!!私はあのウェイさんをやっているんだから!初めて高身長でよかったって思ってるもん!しかもこのマズルの作りとかめっちゃ頑張ったんだから!顎の可動域に合わせてここのしわの表現やゴムで覆ってリアリティある弾力にもして…」
「わかったわかった!そんなこと言ったら私のフミヅキさんだって頑張ったんだから!角なんて本物の鉱石を綺麗に頑張って削って作ったんだから!でもあの肌のうるおいは負けるね…あれ本当に羨ましいわ…」
そんなことを言ってる間にコスプレイヤーの案内が始まった。
「おっ、そろそろ始まるね!ってあれ?ブレスレットどこ行った…?」
「え?もしかして置いてきちゃった?」
「いや、さっきまでつけていたはずなんだけど……」
「もしかしてこのブレスレットかい?お嬢さんたち。」
後ろから声の低い人にそういわれた。
振り返るとそこには手の中に私のブレスレットがあった。
「えっ?…あ!そうですありがとうございます……(あれ?どっかで聞いたことのある声……)」
そう思い顔を上げるとそこには
「初めまして。もう一人の私。」
本物だ。本物のウェイ・イェンウがそこにはいた。腰を抜かすというのはこのことなんだと思った。
「初めまして~。あら!本当に私がいるみたいだわ!」
後ろからヒョコっと出てきた女性も本物だ。本物のウェイ・フミヅキだ。
「なななな……何で……あ、いやスイマセン!!!」
「えっ!私、何かしてしまったか……」
あ、耳が垂れた。本当に目の前に本物がいるんだ。
「あ!いえ!なんも!大丈夫ですよ!!その…ここにいることがびっくりしちゃって…その、何か悪いことでもしちゃいましたか…?もしかして本当は許可してなかったりとか…」
「いや、そんなことはない。ただ、どんなものかと思い見に来たんだ。こんなことは初めてなもので。是非一緒に写真をと、フミヅキと思ってね。」
「私も見てみたかったんですよ。なんかこういうのってザ・お祭り!みたいな感じで。こんな歳にもなってはじゃいちゃってるのよね。」
「あ、そういうことでしたか!そしたら是非お願いします!(フミヅキさんってオフだとこんなに柔らかいんだ…かわいい…)」
そして写真を撮るためにそれぞれが隣になるように並んだ。そしてそれぞれこう思った。
「(本物のウェイ・イェンウ…イケメン過ぎる…しかも身長高い!!えっ、ピースマーク!イケメンなのにかわいいとか…ありかよ…)」
「(本物のウェイ・フミヅキさん美人過ぎる…!!!目とか綺麗ずぎでしょ!あ、なんかいい匂いする…やばっ私今気持ち悪いこと考えちゃったかな…)」
二人ともその後一週間は限界オタクとして生きてましたとさ。
FIN