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    ナツメ

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    ナツメ

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    遙か2
    ※なんでも許せる方向け※
    神子の好きなところを言わないと出られない部屋に閉じ込められた八葉の話
    IQ3くらいの話 ご笑納ください

    神子の好きなところを言わないと出られない部屋に閉じ込められた八葉の話 気がついたら、真っ白な空間に八人がいた。暑くもなく、寒くもない、室内か外なのかは定かではないが、気持ち悪さや飢えや渇きもない。違和感だけがある。
    「どういうことだ……?」
    勝真が苛立ちを隠さずに言う。ついさっきまで、八葉は紫姫の館で、神子の声かけを待っていたはずだ。珍しく、全員集まっていたから、まとまりのない面子が揃うなんて嵐にでもなるか、なんて冗談を言い合っていたはずだ。
    「ここに落ちていた紙に、“神子のどこが好きかを言わなければ出られない”と書いてあるよ。観念するしかないようだね」
    「ここに何らかの怨霊や龍神の気は感じない。問題ない」
    「いや、ありますよ!」
    どうしてそんなに受け入れ体勢ができているんですか、と幸鷹も勝真に同調して、落ち着いている泰継と翡翠に言う。柳に風だとわかっていても、言わずにはいられないのだろう。
    「まあまあ、勝真殿、幸鷹殿。怒っていても花梨さんのところに行かれる訳ではないのですから、ここは諦めましょう。僕から言いますね、花梨さんの笑顔が好きです」
    「あ、ずりぃぞ彰紋!」
    そんなのみんな好きに決まってる、とイサトが叫ぶ。そうこうしているうちに、壁に朱い線で描かれた〇が浮かび上がった。
    「これは……!」
    「……やはり、全員が、言わなければ出られないようですね?」
    「じゃあ、一旦笑顔って全員で言ってみるか」
    異口同音に、笑顔、と言ってみる。──言い終わって、妙な空気になる。
    「……変わらない、ようですね……先ほどの奇妙な〇も出ません」
    「出口らしいものもないな。」
    開き直ったのか、勝真が言う。変化はないのかと頼忠と一頻り、床や壁を殴り倒して、疲れたのかもしれない。
    と、泰継がおもむろに言った。
    「私は神子の言葉が好きだ」
    ぼんやりと、先ほど勝真が蹴った壁に〇が浮かぶ。
    「……ええ、私もです、泰継殿。あの方に応援していただいて、何度救われる思いをしたか……」
    「私と同じでは意味がない。泉水、他にないのか」
    「ああっ、申し訳ありません泰継殿」
    ……ということは、全員で別のことを言わねばならないのか、と、涼しい顔をしている彰紋と泰継以外が生唾を飲み込む。
    「私は神子殿の膝裏が好きだよ」
    「お前はさらりとなんということを……!」
    「なに、若いものには言い出しにくいだろうと思ってね。年長者なりの気遣いと言うものだよ。神子殿は大胆にも脚を出しているからね、やわらかそうな膝の裏も八葉としてお守りしなければ」
    滔々と翡翠がのたまうと、壁に〇が浮かんだ。幸鷹に胸ぐらを掴まれようと、翡翠はいつものように笑っている。ちらりと勝真とイサトが目配せした。今だ、と。
    「オレ、花梨の声が好きだな」
    「俺はあいつの頭が好きだ。丸くて」
    「なんだよそれ!」
    「いいだろなんでも!」
    よく花梨の頭、撫でたりしてるもんな、とイサトが勝真に言う。そんなことを、と幸鷹から非難の声が上がる。やけになった勝真が叫んだ。立て続けに壁に〇が浮かぶ。
    「俺は言った! 早く泉水と頼忠、幸鷹殿も言ったらどうだ」
    「ええと、あのう……」
    「……わかった。私が変えよう。神子のあたたかな手が好きだ。」
    「や、泰継殿、それは私が言いたかったことです……」
    「ダメだ、どんどん泰継に言われちまう」
    まだ発言していない泉水と幸鷹に水を向けたら、玉突きで事故起こった。壁に〇も浮かばない。
    「……ええと、そうですね……私は……神子の……ああ、肩が好きです、たおやかで」
    「えっ……泉水……そうだったのかよ……?」
    「泉水殿……そうだったのですね」
    イサトと彰紋が嘆息する。なんだか聞いてはいけないことを聞いてしまったようで、やたらと気まずい。
    「ああ、いえ、その……!」
    「泉水、問題ない。」
    泰継が〇が浮かび上がった壁を指して言う。泉水もため息をついた。
    「ああ、よかったです。ものの数にも入らない私にも、できることがありました」
    「泉水殿も終わったようだね。頼忠、幸鷹、早くしなさい」
    翡翠に急き立てられ、頼忠と幸鷹が顔を見合わせた。ほかに言われていなくて、それでいていまここで言える、神子の好きなところ。
    「くっ……瞳です」
    「……耳……」
    八人が一斉に壁を見るが、〇は浮かばない。南無三、と目を伏せるもの、御仏に祈るもの、臨戦態勢に入るものと八様に分かれたところ、その見知った場所に戻っていた。
    「──皆様、お集まりいただいて申し訳ありませんが、今日は神子様はお休みとのことで……あら? どうなさいました?」
    「……いや、なんでもない」
    「休みは正直、助かります……」
    「……今日のことは各自、忘れるということで……」
    「問題ない」
    あの奇妙な白い空間は一体何だったのか。いや、考えたくもない。八葉は散り散りになりながら、「あいつ神子(花梨)のこと、そういう風に見てたんだ」という気持ちを隠せずにいた。
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