ひとつとしうえ「九井くん、おはよう」
あ、また始まったのか、と思った。
新学期が始まって、数日。昨日まで九井を「ココ」と呼び、和気あいあいとしていたクラスメイトが、どこかよそよそしい。
九井は病欠のため、小学一年のほとんどを学校に通っていなかった。そのまま進級も出来たのだが、両親と学校が話し合った結果、留年することになった。学力に問題はなかった。どちらかというと体力的な懸念からの判断だ。そもそも九井は四月一日生まれなので、一つ下の学年のほうが身体的には合っていた。
だが、留年という言葉にはインパクトがある。
いちど仲良くなったはずのクラスメイトがよそよそしくなるのは慣例だった。どうせ一か月も過ぎればまた仲良くなる。九井にとっては毎年四月の通過儀礼のようなものである。
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