おまけのボツ集【もしディノと添い寝したら】
毛布に手をかけ体を滑り込ませる。入口から中心へ向かえば徐々に温度が高くなってゆき、ディノの隣へ体が収まった。
「少し狭いな」
「うん、そうだね」
狭いと言いながら、笑顔が絶えないディノにフェイスも表情が綻んでいく。
「ねぇ、ディノ……触ってもいい?」
ジュニアなら問答無用で触れるのに許されたい甘えたな自分が出てしまう。ディノは少し考える素振りを見せてからフェイスに答えた。
「うーんそうだな……手ならいいよ」
「……ありがとう」
そうして繋いだ手が当たり前のように恋人繋ぎでドキリと胸が高鳴った。欲しいと思っていたものをスマートに渡されてしまい、そんなところは似ているなんてと蘇る熱が身を焦がす。
ここまで来たのなら全身が爛れてしまっても、もうよかった。正気でいられないほどに焦がして欲しくて、フェイスはディノに顔を近づけた。
「あっ……フェイス」
「おやすみ、ディノ」
頬に唇を軽く触れ、ちゅっと可愛らしいリップ音も響かせる。ディノの頬がみるみる赤に染まるのを見て、フェイスは満足して目を閉じた。
蛇足
→最初から添い寝候補から外れていたので改めて考えて……やっぱフェイスくん満足しちゃったよ!?ってなりました。個人的にディノは添い寝が苦手な人種だと嬉しいです。
【もしビリーと添い寝したら】
「ねぇ、DJ」
「何? ビリー」
「全然眠れないヨ〜……」
「安心して、俺も眠れないから」
二人で寝転んだベッドはビリーのものだ。今まで勝手に売り捌かれた情報分を返せとか、何かしら理由をつけてフェイスはベッドへに潜り込んでみたもののお互いに落ち着かない時間を過ごしていた。
添い寝と言うよりも並んで寝転んで天井を見ている、と言った方が正しい格好だった。
「てかさ、なんでゴーグル外さないの?」
「普段は外すケド……DJがいるからお顔が眩しくて外せないヨ……」
「こんな暗がりで何言ってんの……はぁ……もういいや」
大きくため息をついたフェイスは、ベッドから降りた。ビリーはそれを引き留めもせず「バイバーイ☆」なんて悠長に見送っている。
「グレイ、起きてるんでしょ?」
「うぇっと……あ、うん」
フェイスが向かったのはグレイのベッドだ。二人の動向が気になって何度もグレイが寝返りを打っていたことにもちろん気がついていての行動だった。
「なら話が早いね。ねぇ、一緒に寝てもいい?」
「ふぇ!?」
これはもうヤケだった。恥ずかしい思いをしてビリーを頼ったと言うのに得られるものがなかった故のフェイスの悪あがきだ。
「はい、端に寄って」
「え、えっと……」
「……グレイ、お願い」
子犬のような顔で見られてしまえばグレイに断ると言う選択肢はない。と、言うよりもほとんどベッドに乗りかかっているフェイスを止める術をグレイは持ち得ていなかった。
「えっと、どうしよう……す、少しだけなら……」
「ちょっと待ってDJ! グレイに手を出すのは反則‼︎」
「反則って何? 別にグレイは拒んでないんだからいいでしょ?」
「グレイが断れないのわかってやってるから反則!」
飛んできた言葉などフェイスに聞く気はなく、ビリーが慌ててベッドへ駆け寄った時には二人は身体を密着させて寝ていた。
「もー! そんなに人肌恋しいなら稲妻ボーイでも抱いて寝てなヨ!」
「おチビちゃんは趣味じゃないから。……ちょっと、引っ張らないで」
ベッドから引き摺り出そうと腕を引くも、ビリーの腕力ではグレイにガッチリ絡みついたフェイスを引き剥がすのは無理だった。
「もう! こうなったらオイラも一緒に寝る!」
「ちょっとビリー!」
「えっ⁉︎ ビリーくんも⁉︎」
グイグイと押されて密着していくグレイとフェイスに構うことなく身体を押し込んだビリーはオレンジの頭をグリグリとフェイスに押し付けていた。
ビリーの行動に負けたフェイスは起き上がり、一度グレイに覆いかぶさる形を取ると反対側にコロリと寝転がった。
「はいはい、これなら文句ないでしょ?」
「グレイー! 大丈夫?」
「…………」
グレイに泣きつくような形で抱きついたビリーに、背にしがみつき耳に囁くフェイス。
間に挟まれたグレイは息をしていなかった。
(ど、ど、ど、どうしよう……⁉︎ ビリーくん、え、フェイスくん……うわ……どこも見られないよ……‼︎)
目を瞑れば体温を前からも後ろからも感じてしまい、逆に二人を火傷させてしまうか心配になるほど自身の熱が上がるのをグレイは感じていた。
「グレイ……なんか熱があるみたいだけど大丈夫? DJが無理させるからだヨ!」
「え? グレイ、熱あるの? 本当だ……ビリーが無理矢理入ってきたからじゃない?」
額を優しく撫でるビリーの手と、首に這い寄るフェイスの手。グレイを挟んでやいのやいのと話す二人は仲睦まじくて羨ましいはずなのに今は羨ましいと言う感情が湧いてこない。湧いてくるのは羞恥心だけだった。
「ふ、二人とも! ……す、少し…………近すぎない?」
「「そうかな?」」
こんな時ばかりベスティと呼び合う仲を見せつけてくるなんて。恨み言のような思考がよぎるも、更に密着する体温の二乗に脳が溶かされていく。
ベスティに巻き込まれ、グレイの眠れない夜が幕を開けた。
蛇足
→最初から添い寝候補から外れていたので改めて考えて……主人公交代!ベスティに愛されて眠れないグレイになりました。すいません。
迷うな、セクシーなの?キュートなの?どっちが好きなの?ベスティナノ!ですね。本当はもっとグレイに二人のことを語ってもらおうと思いましたが蛇足すぎて書くのやめました。
特にネガポジちゃんにCPはないのでお好きに捉えてください。あとビリーは添い寝無理じゃないですか……?潔癖どこまで……悩みますね。
【幼少期のお風呂の話(⚠︎強火兄注意)】
当時は両親も忙しかったから、タクシー代を渡されて帰る時間を自分で決めていいと言われたのもタイミングが悪かった。本当はフェイスが風呂に入っている時に帰ってしまえばよかったのだが、両親が居ないことに開放的になったフェイスが『背中は俺が流してあげるね♪』と言うから仕方なく。これは仕方なくブラッドも付き合ったのだ。これはもう仕方がない。
一緒に風呂などいつぶりか。記憶を辿ってもヒットしないからもう潰えた記憶の一部だろう。再掲するなら今しかないが、年齢を考えればイケナイことだとブラッドは理解していた。しかし、難しい顔をしていたブラッドを見たフェイスに『俺とのお風呂……ヤダ?』なんて聞かれてしまえばコンマ1秒も経たないうちに『それはない』と答えるのはもう仕方がなかった。
蛇足
→急にお兄ちゃんが強火になってしまい収拾がつかなくなったのでこれはガチのボツ。危うくお風呂シーンまで書こうとして蛇足オブザイヤー受賞したので、表彰したのちに消しました。これ違う話になってしまう。
ちなみに本編ではこのことをブラッドは思い出してます。たぶん。
【次の日の朝はこうだったかもIF話】
目を閉じて、開けて。無理矢理閉じて、また開ける。同じ動作を繰り返すこと十回目でフェイスは目の前の光景が現実であるとようやく認めた。
(俺……本当にブラッドと……)
同じベッドに眠る兄は長い睫毛を惜しげもなくフェイスに見せている。まだ眠っている、だがいつかは起きる。その時にどんな顔をしていればいいのか、軽くふやけかかっている顔は不貞腐れた顔を作るのに難儀していた。
(これ、いつ起きればいいんだろ……)
今の二人は手のひら分の距離を空けて向い合せになっている。腕一本の距離はもどかしい。手のひら分の距離は焦ったい。
(き、キスしたんだから……もう、距離なんて無いでしょ)
近過ぎてボヤけた視界は記憶には残らないが、柔らかかったという感想は深く記憶に刻んだ。それから、真っ赤になって慌てる顔はいつもの澄ました顔よりもかわいいことはもう忘れないだろう。
(ちょっとだけ……ちょっと触れるだけだから)
自分に対して言い訳を残して置かれたブラッドの手を取る。大きさがほとんど追いついてしまった手をフェイスは祈るように包んだ。
「あったかい……」
何度となく繋いだ手は、子ども頃の高い体温では無い。それでも二度寝するにはちょうどいい温度だ。
「おやすみ、ブラッド」
整った顔に小さく声をかけ、フェイスは優しい夢の中に帰っていった。
◆
「…………っ」
ブラッドは目が覚めて早々に『もう目覚めることは無いのでは?』と思うほど、死を予期する胸の痛みに苦しんでいた。幼少期のように手を握るフェイスが目に入ってしまい、胸を深く突き刺していたからだ。
イケメンとしてその位置を確立している整った顔は、眉間の力が抜け去り眉は緩いアーチを作っている。同じく緩んだ口元は猫のようで、かわいいを最大限に体現していた。
寝入る最愛を見てしまったブラッドは、受け止めきれない現実に永眠につくか、完全覚醒をしてその目に焼き付けるか心が大きく揺らめいていた。
(今すぐ抱きしめたい。だが、手を離すのも惜しい)
幸せな困り感は昨日ぶりだろう。この状況を司令かジェイか……いや、オスカーが見たなら写真に収めてくれるのだろうか。淡い期待を持って見たがオスカーは気を遣ってか姿はなかった。
(呼んで起こしてしまうのはさらに惜しい……。いや、もうこれ以上かわいい姿を他に見せないで欲しい……なんて、望んではいけないな)
いつか誰かがこの寝顔を独り占めにできる日が来る。先程とは違った胸の痛みにブラッドは酷く眉を寄せ、すぐにいつもの顔に戻っていた。
(この痛みにも慣れたものだ……)
離れることを惜しんでいた触れ合いも、軽く手を動かせば簡単に外れてしまった。まるで縋るフェイスを置いてきた時のように、一度覚悟を決めてしまえば突き通すことなどブラッドには慣れたことだった。
「んんっ……」
動いたことでフェイスの眉間に皺が寄る。泣きそうに見えたのは思い過ごしだと、思うことにして処理が上手くできなくて。ブラッドはあやすようにそっと頭を撫でた。
前髪を掻き分けるとつるりとした額にキスを一つ。涙が出ないよう祈りを込めてまぶたにもキスを一つ。かわいい鼻が目に入ってしまったから鼻先にもキスを一つ。そのまま顔が滑り降りて頬にキスを一つ。
「フェイス、愛してる」
一つ一つでは足りなかった愛が溢れ、一方的な告白を押し付けるように唇へキスをしてブラッドはフェイスから離れた。
穏やかなフェイスの顔が朝日より眩しくて、瞳のマゼンタピンクが光に滲んだのは生理現象だ。
酷い顔を洗って身支度を整えたら、ブラッドはもうメジャーヒーローでメンターリーダーだ。今は他のルーキーたちへやるべきことしかない。
唇の感触を記憶に刻んで、ブラッドの一日が始まった。
起きたフェイスのマゼンタピンクが滲むところも兄弟でお揃いだなんて、ブラッドが知ることは無かった。
蛇足
→これは本編では書ききれず、元々おまけ用に書いていたものです。朝どうやって二人が起きたのか……ちょっと悲し過ぎたのでボツです。この展開からあのオチは無理ですね。情緒大丈夫か?ってなる。
毎度のことながら話が矛盾しおり、終わり方が駆け足ですいません。
あとがき
この度は【ねないこ】をお手に取ってくださりありがとうございました。また、おまけにもならない蛇足も読んでくださってありがとうございます。
拙い文章かつ書ききれてないことばかりで、かなり読みにくいし意味わからん作品かと思います。自分の好きが誰かの好きにヒットしたら嬉しいな〜と思うのでヒットした方はこれからもなんか投稿するのでよろしくお願いします。