「どこかへ行くのか?」
天才クラブのメンバー「貴金の神」鍾離は自らの監視者に問いかけた。
かつて人々が夢見た『真の錬金術』を実現し、それを以て神の一瞥を受けた天才は現在スターピースカンパニーの監視下に置かれている。呼吸のような気軽さで希少金属を造られては星間市場に悪影響が出ると判断されての処置だ。
「調和セレモニーに招待されてね。俺が行くことになった。」
監視者…戦略投資部の高級幹部タルタリヤは答える。
海に沈む夕陽を思わせる橙の髪と深い海の底のような瞳。かつて雪に閉ざされた星に暮らした『海屑の民』の特徴だった。その民も民族抗争で殆どが死亡。タルタリヤは現在確認された唯一と言っていい生き残りであった。
1894