過去と今と未来へと『プロローグ』 雛菊
中央の国にも冬将軍が訪れ、色付いた木々たちもすっかり葉を落としてしまった。
きっと北の国はすっかり白銀に塗り潰されている頃だろう。ネロは久しく見ていない景色へ思いを馳せをながら、オヤツ用にスコーンを焼いていた。
鼻歌交じりに生クリームをホイップしていると、背後に気配を感じて徐に振り返る。
香りに釣られたお子ちゃまたちか、それとも、小腹を空かせたシノかオーエンか。
立てた予想は見事に外れ、そこには困り果てた様子の晶が立っていた。
「賢者さん? そんな顔して、何かあったのか?」
「ネロ…あの、実は…」
北の国にある時の洞窟に程近い村から、"北の国の魔法使いに是非解決して欲しい"と大量に依頼書が届いた。その内容は魔物討伐から怪異解決までどれも深刻に綴られているが、中にはよくよく読むと大袈裟に感じる物も混ざっている。しかし、実際に軽度の依頼なのかは行ってみないと分からない。
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