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    ふゆふゆ

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    ふゆふゆ

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    私の書いている中⛰️◻️藤の🌟🎈シリーズの主軸の話。
    同棲を始めるまでの話、ここから次は🐈️と🐕️をお迎えする話になります。
    支部にはエロも含めて全編投げますが、こちらで大まかな話は分かると思います。
    その前にリプ欄に繋がってるお話を読んで貰った方が分かりやすいです。

    君と一緒に暮らそうアラームの音で白藤が起きる、アラームを止める前に中山も起きて、白藤に微笑む。それに白藤も微笑み返す。

    「はよ、類。」
    「うん、おはよ、司くん。」

    名前を呼ばれて、肩に手を回されて、リップ音。頬にされたそれにクスクスと笑い白藤も中山の頬に返す。

    「口は歯磨き後、だろ?」
    「うん。」

    顔を覗き込んで来た中山に白藤はこくんと頷く。けどと言った後にこれはいいだろ?と抱き寄せられて、ハグ。それに白藤もうんと笑い、中山の背に腕を回した。

    翌日。先に家を出る中山に白藤が弁当を渡す。

    「弁当、サンキュ。」
    「返すの今週の金曜でいいからね。」

    ああと頷いた中山に白藤は行ってらっしゃいと微笑んで、キスをする。行ってくるともう一度白藤にキスをして、玄関を出ていくのに手を振って。

    「次に会えるの金曜か…。」

    ドアが閉まり、足音が遠退いてからぼそっと呟く。年末から年始、週末はずっと中山と過ごしているせいで、直ぐに寂しくなってしまっていけないなと白藤は苦笑する。引っ越し準備する前であれば、月曜日は自分が中山の家に泊まりに行っていたが今は引っ越しの準備を進めなくてはならないから帰るのは自宅だ。

    「けど、同棲始まったら、ずっと司くんに会えるんだから、今は頑張らなきゃ。」

    頷いて、白藤は自身の準備を始めた。
    その日の夜に中山から電話が掛かってきて、白藤はそれを取る。

    「もしもし?」
    『類、今、大丈夫か?』

    中山の気遣う声にうんと白藤は頷く。白藤の返事を聞いてから中山が本題を話し出す。

    「と言うことは今週は泊まりに来れないってこと?」
    『ああ、悪い。』

    中山曰く、来週の火曜に有給を取った関係と取材先の予定の関係で金曜には泊まりに来れないそうで、申し訳なさそうな中山に大丈夫と白藤は返すが気持ちは少しだけ落ち込んでしまう。今週はもう中山に会えない。

    「んーん、お仕事だから仕方ないよ。来週の火曜に会えるの楽しみにしてる。お仕事頑張って?」

    白藤の声が明らかに落ち込んだのが中山にも分かる。白藤が実はとても寂しがり屋な事はプロポーズしてからずっと白藤を見ている為に中山も分かっている。今までに付き合った相手の中には白藤と同じように寂しがり屋な相手は居たが、当時は本当に面倒臭く、かつその中でも一番面倒だったのは仕事と私、どっちが大事なのと言う相手、当然仕事に決まっているだろと当時の自分なら返していた。白藤はこのように背中を押すタイプなのだが、白藤だと寂しがらせてしまうと申し訳なく思ってしまう、こんな感情も中山は初めての感情だ。仮に今、白藤に仕事と僕とそう言われてしまえば、今の自分は白藤を優先したくなってしまうだろう。だがそんなこと言えば白藤が怒るのも良く分かるし、本当にちゃんと考えればどちらも秤に掛けられる筈もない、仕事も白藤も中山にとっては大事な物なのだから。同棲を始めたら寂しがらせずに済むようになるのだろうかとふと考えた。

    「類、寂しいのは俺も同じだからな。」
    『…え?あ、ごめんね、もしかして僕、口に出してしまっていたのかな。』

    申し訳なさそうな白藤にいや、口には出してないけど分かると中山が返す。

    『僕、そんなに分かりやすい?』

    やっぱり申し訳なさそうな白藤の声がする。

    「んー、まあ…。」

    今まで寂しいとか直ぐにバレてたか?と中山が問い掛けてくる。

    「んーん、確かに寂しいって思ったりしてたけど、付き合った人たちにはバレたりしてなかったかな…。」
    『なら分かるのは俺がお前のことばっか考えてるからかもな。』

    優しい中山の声が耳元でする。

    「けど、今まで一週間会えないってだけや、ましてや去年のイブみたいに一緒に過ごせないってだけでこんなに寂しいって思ったことは無かったかも…。」

    それだけ僕は司くんの事が好きなんだね…。と言う白藤の声に愛しさが込み上げて来て、今すぐ抱きしめたいし、愛したい。何時もなら月曜の夜から水曜の朝までは白藤は中山の家に居るが今日は居ないのがこんなに口惜しいとは。

    「類。」
    『…なぁに?』

    愛してる。と一言。それに白藤も僕もと愛を返してくれる。そんな白藤がやはり愛しい。

    「類。」

    何?と言う白藤に携帯越しにリップ音を立ててキスを送れば、息を飲み込んだ白藤からもリップ音を立ててキスを返され、思わず中山はニヤけてしまい、口元を手で覆う。

    『司くん、来週の火曜日ね?…お休み。』
    「ああ。お休み、類。」

    正直まだ話して居たくはあったが、時計を見れば、結構な時間で白藤の気遣いを感じる。通話の切れた携帯を見つめ、中山はぽつりと一言。

    「んとに、俺は類が好きだな…。」

    自分で口に出していて思わず照れてしまい、また口元を手で覆う。頬が熱い。だが、これはこれで…。

    (悪く、ねぇな…。)

    自然と笑みがこぼれて、そのままベッドに寝転んだ。
    本当にこんな事を自分が思う日が来るとは思っても居なかった。こんな事一度ですら思ったことはない。恋愛が良いなど、想い想われるのがこんなに幸せな事など白藤と付き合ってなければ一生知ることは無かった感情だろう。
    それから数日、メッセージ等々でやり取りしては居たが、直接会うのは一週間ぶりだ。

    (こんなに会えるのが待ち遠しいとはな。)

    白藤の自宅であるマンションの前に中山は車を停めて、白藤に連絡すれば、ものの数分で白藤がマンションから出てくる。それに伴い助手席の鍵を開ける。

    「待たせてごめんね、司くん。」

    ドアを開けて申し訳無さそうに乗り込んできた白藤に待ってねぇよと中山はふと笑う、少しでも待たせたらこんな風に謝る謙虚な所が愛しい。その優しげな顔に白藤の胸が音を立てた。中山のこの表情はプロポーズをされてから良く見るようになった表情で、セフレのような関係だった頃には一度ですら見たことがない。こんな表情が見られるようになるなんて思わなかった。

    「類。」
    「何、司く…ん、」

    リップ音を立ててキスをされて、中山は直ぐに離れる。不意打ちに思わず白藤の顔が赤くなり、そんな白藤を見て中山はクッと喉を鳴らした。

    「今日の服、可愛いな。」
    「あ、ありがと…。」

    息をするように誉められて、思わず下を向いてしまう。顔が熱い。

    「んじゃあ行くか。」
    「う、うん。」

    車を発進させた中山をチラッと見る。車を運転している横顔と服を改めて確認する。

    (…司くん、本当に格好いいなぁ…。)
    「格好いいなぁ…。」

    無意識の内にこぼれた言葉。はっとした白藤の顔が赤くなる。どうか聞こえてませんようにと願うも、中山にはばっちりと聞こえていたらしい。中山は楽しそうに笑ってこちらを見ており、目が合ってしまう。

    「お前に格好いいって言われんなら本望。デート、だからな。」
    「…う、」
    「今日の類が可愛い格好してんのも、デート、だからだろ?」

    図星をつかれて白藤は目を泳がせた。一週間ぶりに会えるし、同棲の為の買い物と言えど、デート、なのだ。そわそわしてしまって、ああでもない、こうでもないと鏡の前で一生懸命コーディネートしたのだ、コーディネーターをやっている昔馴染みのアドバイスも電話で聞きながら。

    「良く似合ってる。」
    「司くんも凄く似合ってる、格好良い…。」

    誉めて来た中山の顔を改めて見て、白藤も誉め返せば、横目で見てきた中山がサンキュと目を細めた。

    (こんな格好良い人が僕の恋人、なんだ…。これから同棲して、行く行くは結婚、するんだね…。)

    そう思って、白藤は自然と笑みがこぼれて目を伏せる。

    (ああ、綺麗だ。類は本当に何処までも綺麗だな。)

    その笑みを横目で見ていた中山は本当に白藤は自分には勿体なさすぎる程、魅力的で綺麗で可愛い。きっとこの服も一生懸命考えて選んだ服で、その意地らしさが愛しい。

    (絶対に二度と泣かせて堪るか。)

    中山はそう決意を新たにした。
    大型家具店に着き、車を停めた中山が運転席から降りて、助手席に回る。ドアを開けて、白藤に手を差し出した。それを見て、白藤は中山の手に自分の手を置き、エスコートされて車を降りる。これも随分と慣れた物だ。ドアを閉めた中山に指を絡めて握られる。手を引かれて歩きだした。

    「本棚。何処だ…?」
    「んー…、あ、司くん、二階にあるみたい。」

    店内に入り、二人で案内板を見る。先に何処にあるのかを見つけた白藤の言葉に中山はそうかと頷き、エレベーターで二階へ上がる。本棚の売場へ向かい、見る。

    「んー、何れが良いかな…。」
    「出来たら大きい方がいいな。」

    まだ増えるだろうしと呟く中山にそうだねぇと白藤も頷く。

    「本だらけになっちゃうね。」
    「まあ俺も類も本が好きだし、仕方ねぇな。」

    本が自分たちを繋いでくれた物の一つで、中山も白藤もますます本が好きになっているのは余談だ。

    「本棚置けなくなっちゃったら?」
    「引っ越しだろうな、何だったら家建てても良いかもな。と言うか、それはまた同棲しだしてから考えような。」
    「ふふ、うん。」

    手を繋いでいるだけじゃ少し物足りなくて、白藤は中山の腕に自分の腕を絡めて、中山の肩に甘えるようにもたれ掛かる。そんな風に甘えてきた白藤に中山も自然に笑ってしまった。何せ可愛いのだ、そんな白藤が。本当に今までの自分ならこんなカップルを見たら、嘲笑していたと言うのに。今の自分はこんなにも幸せを感じている。白藤もこんなに今までの相手には甘えたことがなく、それでも中山にはこんなに甘えたくなってしまう。不思議な物だ。

    「あ、あれは?」

    ふととある本棚が目に入り、中山の肩にもたれ掛かっていた身体を起こして白藤が指を指す。その白藤の指を辿り、中山も笑う。

    「ん?お、いいな、あれ。」

    中山の家にも馴染みそうで、かなり大きい本棚だ。近くに寄って値段を見る。

    「あ、でもやっぱり値段はするね。」
    「そりゃこんだけ大きかったらな。」

    けどまあ出せねぇ値段じゃねぇな。と中山はぽつり。

    「まあ将来、一軒家建てた時にも使えんだろうし、今出しても問題はねぇか。」
    「大丈夫?」
    「ああ、俺には趣味ってほどのもんがねぇし、貯金はあるからな。」

    中山の唯一の趣味である読書。その本は本でそこまでの値段ではない。図書館だってあるのだから。今まで付き合ってきた相手にもそこまで金を掛けている訳でもない、多少実家に仕送りはしているが、それぐらいな物で中山には貯金がしっかりあるのだから、将来を見越してのこの買い物は安い。因みにそれは白藤も同様だ。

    「半分出すね?僕の本も入るし。」
    「俺が全部出すって言ったって類は聞かねぇだろ?なら頼む。」
    「うん。」

    此処に来て、使い道がなく貯まっていた金が役に立つとは中山も白藤も思ってもいなかった。

    「取り敢えずカードで俺が払うから、後で半分出してくれ。」
    「うん、分かった。」

    頷いた白藤に中山は目を細め、商品カードを取り、レジへ。配達やらもろもろの手続きをして、店を出る。時間は昼を過ぎた所で、昼、どうする?と中山が声を掛ける。

    「あ、此処の近くに新しいカフェが出来たみたいで、そこにしない?そこのオムライス、凄く美味しいらしいんだよ!」
    「へえ、いいな。そこにするか。」

    頷いた中山に携帯を弄り、白藤がその画面を見せる。それを見て中山はカーナビゲーションに住所を打ち込む。出た所を設定して、車を走らせる。

    「昼食ったら、次、どうする?つうか、俺、見たい映画あんだけど。」
    「あ、それって司くんが担当した小説の映画?この前公開されたよね。」
    「そう。いいか?前売りもあんだよ。」

    伺いを立ててくる中山に白藤は頷く。

    「荷物も大方詰め終わってるから、僕、今日は目一杯司くんとデートしたいな。」
    「へえ?それは夜も含めて、か?」

    横目で白藤を見てニヤッとした中山にもう!と怒ったように白藤は返す。

    「司くんのえっち!!スケベ!!直ぐそっちに繋げる!!」
    「悪いな。」

    クックッと笑っている中山に白藤は頬を膨らませる。

    「悪いと思ってない!!」

    そんな白藤が可愛くて、車が信号で止まったのを良いことに中山は白藤の頬に手を伸ばす。

    「類、可愛い。で、どうなんだ?夜は?」
    「…それ、僕の口から言わせたいの?」
    「言わせてぇな?」

    頬を赤らめて、潤んだ瞳の白藤が上目遣いで中山を見てくる。そんな白藤に中山は目を細めた。

    「司くんの意地悪、分かってるくせに…。」
    「意地悪で結構。だって聞きてぇし。」

    信号が変わり、また車を発進させた中山の服の裾を少しだけ引っ張り、白藤は小さな声で呟く。

    「…僕も、司くんとえっち、したい。」

    もじもじと恥ずかしそうにしている白藤に中山はにっと笑う。そこで丁度カフェに着き、車を停めた中山は白藤にキスを一つ。

    「上等。」

    赤い顔と潤んだ瞳の白藤を見て、中山は耳元で甘く囁く。

    「夜、覚悟しとけ?めちゃくちゃ甘やかしてやる。」
    「…ん、」

    小さく反応した白藤に中山は目を細めた。
    それから昼を食べて、映画館に向かう。ショッピングモール内の映画館であった為、映画を観てから感想を話し合いながらモール内を宛もなく歩く、夜ご飯には少しだけ早い。

    「あ、電池買わなきゃ。」
    「入るか?」

    家電量販店の前で立ち止まった白藤に中山が問う。それに頷き、量販店の中へ。

    「類と暮らすこと考えたら、俺ん家の冷蔵庫少し小さいかも知れねぇな。」

    電池をレジに持っていく前に中山がボソッと呟く。

    「…同棲に備えて、家電も見てみる?」
    「だな。」

    手を繋いだままで冷蔵庫売場の方へ向かう。

    「でも何で急に?」
    「俺が料理がからっきしなのは類も分かってるだろ。」
    「うん。」

    だから俺の家の冷蔵庫に入ってんのはミネラルウォーターとかそんなんだけだ。と言う中山に最初、中山の家の冷蔵庫の中を見た時は驚いたなぁ、本当に何にもないんだもん…。と白藤はこぼし、それに対して正直俺との冷蔵庫の中の違いにかなり驚いたと中山は話す。水しか入っていない為、隙間だらけの自身の家の冷蔵庫と違い、食材等々が入っているためみっちりしているが、きっちり仕分けしてあり、整頓されている白藤の冷蔵庫。冷蔵庫の大きさはそんな対して変わらないが…。

    「同棲始めんならそれが二人分になるだろ?だから、小せぇかもなって思ったんだよ。」
    「あ、そっか、そうなるよね。」
    「それに類、割りと買いだめするだろ?安い時に。」
    「うん、そうだね。今、物価高だから…。」

    今までなら一人分で良くて、中山が泊まりに来る際に少しだけ買い足していたりする。お金をそこまで使わない為にお金に困ってはないが、高くなったなぁと白藤は思わずため息をついてしまうのだ。冷蔵庫の容量に見合ってないと逆に電気代も高くなってしまうから多く買うことも出来ない。

    「なら少し大きい冷蔵庫、買っても良くねぇ?」

    中山がふと笑い、その中山の言葉にまた改めて同棲するんだと自覚させられて白藤の頬が赤くなり、思わず照れ笑いがこぼれる。

    「そう、だね。うん、見てみよう。これもちゃんと半分出すからね。」
    「ああ、頼むな。」

    ああでもない、こうでもないと冷蔵庫を見る。そんな二人に店員が話し掛けてきて、冷蔵庫の説明を聞く。

    「これいいな。」
    「これにするか?」

    とある冷蔵庫がいいなと呟いた白藤に中山が問う。それに頷き、店員へ。店員が在庫を見にバックヤードへ向かうのを見て、二人で話し始める。

    「あと、他に買い替えた方がいい家電はあるかな…。」
    「洗濯機か?」
    「かな、どうせなら乾燥機ついてるのが欲しいかも。」
    「それも見てみるか。」

    そこで店員が戻ってくる、在庫はあるようだ。その店員に洗濯機も見たいと中山は返す。畏まりましたと丁寧にお辞儀した店員が案内致しますと微笑む。その後に続き、歩き出した。

    「あとは?」
    「炊飯器、かな、今の小さくない?」
    「かも知れねぇ。あと電子レンジも結構ガタ来てる。」
    「ああ、そうかも、この前使った時にちょっと音が怖かった。」

    そんな会話をしている中山と白藤に店員は目を細める。

    「(とても素敵なカップルね。二人とも随分と顔が良いし、目の保養だわ。これから同棲でも始めるのかしら。美人さんの方が奥さん、かしらね、指輪もしているし。王子様フェイスの方が旦那さん、かしら。)こちらで御座います。」

    案内して頭を下げた店員に礼を言い、中山が説明を促す、それに畏まりましたとまた丁寧にお辞儀をした。
    もろもろの買い物が済み、こちらも配達を頼めば、店員は畏まりましたと微笑む。

    「ふふ、お幸せに。」

    店員の言葉に中山と白藤は目を丸くする。照れながらはにかんだ白藤がありがとうございますと綺麗に微笑み返した。

    「今日だけでかなりお金使っちゃったね。」
    「必要経費だろ。」

    苦笑気味の白藤に中山も肩を竦める。

    「で、夜、どうする?食べに行くか?」
    「どうしよう、今日、いっぱい使っちゃったし。司くん、何か食べたい物ある?」

    中山の問いに白藤は顎に手を当てて空を見る。そのまま上目遣いで中山を見てきた。

    「強いて言うなら、俺は類の料理が食いてぇな。」
    「今からだと作るの遅くなっちゃうよ?」

    眉を下げた白藤に構わねぇよと中山は笑う。

    「俺が類の料理が食いてぇんだから。あ、でも類が疲れてんなら別に食いに行っても良い。」

    目を閉じて微笑む中山に胸が甘く鳴る。そう言ってくれる中山に応えたい。

    「あ、ならこの前作れなかった、グラタンにする?ちょっと買い物しなきゃだけど。」
    「良いのか?」
    「うん!」

    僕の家に行こう!と言う白藤にああと中山は頷いた。
    買い物をして、白藤の家へと向かう道すがら。

    「司くん、今日、泊まって行く?」
    「ああ、類がいいなら、泊まらせて貰ってもいいか?」
    「うん。それに、」

    …夜にえっち、するんでしょ?と恥ずかしそうに上目遣いで中山を見てきた白藤を横目に見て、本当に敵わないなと中山は苦笑する。

    「俺、本当にお前に勝てねぇわ。」
    「ふふ。」

    楽しそうに笑っている白藤に目を細める。

    「お前ん家行く前に俺ん家寄って、明日着ていくスーツ取ってくる。」
    「うん、大丈夫。」

    自身の家へとハンドルを切った中山に白藤は頷く。一度車庫に停めて、ちょっと待っててくれと白藤に言い、車を降りる。そんな中山を見送り、白藤は思わずニヤけてしまう。

    (ふふ、今日はずっと司くんと居られるんだ。本当に嬉しい。幸せ。)
    「本当に、こんな幸せになれるなんて思ってもみなかったな。」

    告白されたのにセフレのような関係なって沢山傷ついた。だから、あの日決別しようとして別れを切り出した。だけどその翌日にプロポーズされて、今は目一杯に中山に愛されている。本当に夢のようだ。

    「夢なら永遠に覚めないで欲しい…な。」

    思わず願いがこぼれて、胸が苦しくなる。思わず涙が溢れ落ちたところで、戻ってきた中山がきぱりと言い放つ。

    「夢な訳ねぇだろ、頼むから夢にしてくれんな。」
    「司、くん。」

    ほろほろと涙を流す白藤の頬を拭い、目尻の涙を拭う中山は何とも苦しそうな顔をして、白藤を抱き締める。

    「本当にプロポーズする前は悪かった…。まだ現実だって思えねぇなら、これが確固たる現実だと思ってくれるように頑張る。だから、俺の傍にずっと居てくれ、な、類。」

    中山の力強い腕からは自分を離さないと言う強い意志を感じ、その声もその意志が滲み出ている真剣で誠実な声。それに白藤はうんと涙を流しながら、中山の背中に腕を回した。暫く抱き合っていたが、そろそろ良い時間になっている。

    「こんな時間…。」
    「類の家、行くか。」
    「うん。」

    時計を見た白藤に中山が問い掛けてきて、白藤は頷く。そんな白藤を確認して、中山は車を発進させた。
    白藤の家に付けば、白藤の言った通りに荷物は大方詰め終わっているらしく、先々週に泊まりに来た時より段ボールが増えている。

    「散らかってるけど、ごめんね。」
    「いや、平気だ。」

    これが今、自分の家に引っ越し、同棲を始めてくれる為の準備だと思うととんでもなく喜んでいる自分が居た。

    (やべぇ、嬉しい…。)
    「今から作るね、ちょっと待ってて?」
    「ああ。」

    頷いた中山に白藤が首を傾げて問い掛けてくる。

    「何か飲む?」
    「いや、大丈夫だ。何か、手伝えることあったりするか?」

    大丈夫だと微笑む白藤にそうかと中山は頷く。そのままダイニングテーブルの椅子に腰を降ろした中山に微笑み掛けて、白藤が腕捲りをした。白藤が料理している姿を眺める。楽しそうに料理をしている白藤がとても可愛く、見ていて飽きない。それから暫く。トースターを開けた白藤が頷く。

    「うん、出来た。」

    ふわっと微笑んだ白藤と美味しそうな香りが部屋に漂ってくる。

    「お待たせ、司くん。どうぞ。」

    コトンと目の前に置かれたグラタンはとても美味しそうで、中山の顔も綻ぶ。
    スープとサラダも置かれて、向かいに白藤が座る。座ったのを確認して、中山は手を合わせ、それに伴い白藤も手を合わせる。食前の挨拶をして、スプーンをグラタン皿に差し込む。口に運べばふわりと鼻を抜けるバターとチーズの香りと米と玉ねぎ、鶏肉の食感。

    「ん、んまい。」
    「ふふ、良かった。」

    嬉しそうに微笑んだ白藤がドリアにしたんだけどどう、かな?と問い掛けてくるのに美味いと返す。

    「やっとドリアだが、グラタン食えたな。」
    「ふふ、同棲始めたらもっと色々作るね、だから、何が食べたいってどんどんリクエストして?作ったことなくても頑張る。」

    白藤の言葉にああと頷く。

    「また一つ同棲の楽しみ、増えたな。」
    「ふふ。うん。」

    その後は他愛のない話をしながら、食事を進めていく。こんな和やかでゆったりとした時間はとんでもなく贅沢なことで、幸せな事だ。こんな時間をずっと二人で過ごして行きたいと中山も白藤も思っている。

    「ご馳走様。」
    「お粗末様でした。」

    食器を重ねてシンクに置いた白藤があと声を上げる。

    「何だ?」
    「お風呂、まだ洗ってなくて…。」
    「んじゃあ俺が洗っとく。」

    ありがとうと微笑んだ白藤に微笑み返し、中山は立ち上がった。



    引っ越し当日。全て業者のトラックに積み込み終わり、要らないものは粗大ごみやリサイクルショップに出して、空っぽになった部屋を見渡す。

    「本当に色々あったな。」

    色んな思い出が過ってきて、少しだけ涙が滲んだ。大学の為に上京してからずっと住んでた家だ。その間に色んな相手と出会い、別れた。そして中山と出会った。それから暫くして、中山から告白をされてそれを白藤は受け入れた。
    考えてみたら本性が分かる前の中山はかなり無理をしているようだったなと思い返す。

    「それからふとした拍子に司くんの本性が分かった。」

    それを認めて受け入れて直ぐにセフレのような関係になった。これも思えば中山の性欲の強さなら今になってああなった理由も納得出来るのだが。

    「司くんは凄く不器用さんだから、多分愛情表現の仕方が分からなかったんだろうなぁ…。また司くんはちゃんと恋愛してなかったみたいだし…。僕らにはあまりにも言葉が足らなすぎたね…。今はちゃんとそれ以外の愛情表現もしてくれるようになったけど…。」

    それはプロポーズされた日に言われたが、プロポーズされる前の当時の白藤にはそれは許容できなくて、セフレみたいな関係があまりにも辛くて辞めたくて、別れを切り出したのも此処。そこから行いを振り返った中山にプロポーズをされて、初めて料理をもてなしたのも此処。きちんと心を通わせて初めてしたセックスも此処。そして中山の家の鍵を渡されたのもこの家だ。本当に沢山の思い出が詰まってる。そんなこの家は今日でさようならだ。

    「今までお世話になりました。」

    玄関に立って深くお辞儀をして、もう一度見渡してから、家を出て、鍵を閉める。もう一度ドアに向かってお辞儀をして、鍵を管理室に返した。その際にこのマンションの管理人で大家の恰幅の良い朗らかな年配の女性に寂しくなるわねと眉を下げられて、白藤もええと苦笑した。

    「元気でね、白藤くん。」
    「ええ、管理人さんも。」

    もう一度頭を下げて、マンションのエントランスを出た。もう一度マンションを見上げて頭を下げて、中山の、そしてこれからは自宅になるマンションに向けて歩き出す。荷物があるため、中山はマンションで待っている。
    中山のマンションに到着すれば、業者のトラックは既になく、荷物は全て運びこまれていることに気づく。確認後、改めて中山の家へと向かい、チャイムを鳴らす前にドアが開けられて、中山が顔を覗かせる。

    「司くん。」
    「何となく類が戻って来たのが分かった。グッドタイミング、だな。」

    にっと笑った中山が荷物、もう届いてるから入れよ。と促す。それにお邪魔しますと白藤が言えば、中山は違うだろ?と機嫌悪げに眉を寄せた。それに白藤はハッとする。

    「あ、ただいま…?」
    「正解。お帰り、類。」

    優しげに目を細めた中山に額に口付けられた。それに白藤は思わず顔を赤らめて額を押さえる。

    「あの、司くん。」
    「ん?」

    小首を傾げた中山に白藤は改めて、なんだけどと呟く。

    「不束者ですが、よろしくお願い致します。」
    「類が不束者なら俺はどうなるんだよ。」

    頭を下げた白藤に中山は苦笑する。

    「けど、こちらこそよろしくな、類。」

    また優しげに目を細めた中山に白藤はふわりと綺麗に微笑んだ。
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