カヲルくんが自分の為に全てを壊す話【1.永劫回帰】
昔から人と接するのは苦手だった。人から褒められようと貶されようと相手の真意が分からない限り本当の意味で自分の心は満たしてはくれないから。
それでも傷付くような事を言われれば簡単に傷付いたし、褒められればそれがその場限りの建前であっても嬉しかった。
相手の真意が自分には分からないと分かっているのに、分かりやすい表面上の良し悪しを結局は求めてしまう自己矛盾をずっと抱えながら生きてきた。
誰かの良い子でいればまず傷付かない、居場所を用意してもらえる。最低限人の役に立っていればこんな僕でも生きていても良い、それが両親に捨てられた僕なりの生き方だった。
「父さんが、ですか」
僕にあてがわれた小さなプレハブ小屋にはベッドと机と、幼い頃新品で買ってもらったチェロ、教科書と貰った本と参考書と...数えればそれくらいしかなかった、買って貰えなかった、と言うよりはそれくらいしか強請った事がなかった。
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