逃げた民衆に残された夜の路地にひとり追い込まれて、他の味方とは逸れてしまった。多勢に無勢は痛いが、こちらは所詮雇われた傭兵、援軍はハナから期待して居無い。西の国を観光して居る暇の無い中、土地勘も不利だが、夜も更けた、あちらさんもこんな雑兵に割いて居る時間も弾丸も無いだろう。どうにか成らんもんかと思考と視線を巡らせて居るところに、それは突然現れた。暗い夜にいっそ灯りのように立ち込めた白。霧だ。夜の街と追っ手の見える視界に、霧が入って来る。敵は何故だか慌て慄き、恐怖に目を血走らせて、もうこちらのことなど忘れてしまったようだった。