いつかの話【3】 己の身を焼き続けている女だった。
煌々と瞬いて彼女の心臓を焼き続けるその火は、命を燃やして瞬く光はとても綺麗で。もしこの世界に神や天使がいるのならば、彼女のような存在だろうとヨルンは考えていた。優しく、激しく、冷淡で、感情的で、太陽のように白く煌々とした──己のためならばその全てを焼く、この世に最も誠実で無慈悲な存在なのだと。
死ぬことは嫌だが、彼女の炎に当てられて裁かれるぐらいならば納得できるとさえ。
「私は、人間を憎んだ」
暴走体が解け人間の姿に戻されたセラフィナは、命の残り火を吐息で撫でるように語る。
人間が憎い、彼女はそう言っていた。全ての死を望む人間が憎い、それを裁くことのない神が憎い、そんな神が抱く世界が憎いと。その憎悪は長い年月を生きたことで膨らみ、そして腐ることなく灼熱を抱き続けていた。
3657