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    hiira1139

    @hiira1139

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    hiira1139

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    30年後一緒にいるけど、30年の間に数年別々に暮らしてる期間があってもいいよなぁ〜〜〜の妄想

    帰る場所彼と離れて約5年が経った
    きっかけは私の「親孝行」
    「親が元気なうちに親孝行くらいしておけよ」という彼の言葉にどこか重みを感じてしまい
    あれよあれよという間に私の親孝行が始まった。
    共に旅行に行き、お祖父様のお遊びにつきあい、食事をし、映画を見て、編み物をし...
    いつのまにか5度目の冬に差し掛かっていた。
    「そういえば若造は元気かな」
    そう呟くと、私と運命を共にする我が愛しの使い魔は私のマントの裾を咥え、城とは逆方向に歩みを進める。
    ぐっと冷え込んだ夜に白い息が溶けてゆく。

    あいつが出て行って4年と9ヶ月が経った
    最初は寂しく感じた感覚も慣れ、元の日常が帰ってきた。
    だが、数年連れ添った相棒との習慣はいまだに抜けず、洗濯物の干し方や買い物中にふとあいつがよぎった。
    メビヤツやキンデメ、死のゲームはよく俺のそばによってくるようになった。メビヤツは事務所内で俺について回るようになった。キンデメは食卓に移り、毎日俺の食事に文句をつけるようになった。死のゲームは自らジップロックに潜り込み風呂に浸かる時間を監視するようになった。
    「あいつは楽しくやってるかな」
    今日も主食になれなかった牛乳を飲み干した。

    数年ぶりにボロいビルの前に立っている。
    我がドラルクキャッスルマークⅡはこの古いビルの中にある。狭くて、騒がしくて、臭い。私の実家とは大違いで、カーテンも遮光性はない。棺桶は丸裸で誰にでも目についてしまう、しかも勝手に中に入られる。TVゲームの画面が小さい。風呂が狭い。台所も狭すぎる。不便なことの方が多い場所だ。それでも私はここが私の城だと認識している。
    だがそこに入れず私は足踏みをしていた。
    「私、ロナルド君になんのお土産もないね...?」
    「ヌゥン...」
    そうなのである。10年ほど同居していた同居人に久しぶりに会うにも関わらず何も用意していないのである。もちろん、何もないというわけではない。お父様やおば様、その他一族から山のようにお土産を持たされている。
    だが、私からのはない。
    そもそも、山ほど用意された土産以外の土産が思いつかなかったのである。帰り道で何か思いつくだろうとさまざまな店を覗きながら来たが、全て揃っているのである。さすが我が一族、抜け目がない。そしてそれに悩まされるとは夢にも思わなかった。
    「どうしよう?私がいればいいかな?私が1番の土産?」
    「...ヌゥン」
    「...花でも買ってくるか」
    「ヌン」
    そういうことになった。

    「ロナルドさん。ちゃんとご飯食べていますか?」
    そう話しかけてきたのはギルドマスターのゴウセツだ。
    「何かお作りしましょうか」
    ドラルクが親孝行のために実家に帰ってからギルドのみんなはよく俺にそう聞いてきた。
    確かにここ数年で体重は落ちた。元の体重に戻っただけではあるのだが、明らかにツヤがなくなったとのことだった。
    「いや、今日はいいや。帰って執筆もしないといけないから」
    「持ち帰り用に何か作って貰えばいいんじゃね?」
    「そうだよロナルド。明日の朝にでも食べれば?」
    「...じゃあ何か...お願いできます?」
    「はい」
    ショットもサテツも俺に気を遣ってくれているんだろう。情けないことだ。

    「アレ!?ドラルクさん!?」
    花屋に行くとそう声をかけられた。
    「初めまして?お嬢さん」
    「ああごめんなさい。初めまして!ごめんなさいね、急に。私ロナ戦のファンで...!」
    「ああそうなのですね。ありがとうございます」
    「ロナ戦でもう帰ってこない的なことを書かれていたから、驚いちゃって!でも帰ってこられたんですね!コンビ復活するんですか?」
    「えっ」
    「え?」
    どうやらしばらく離れているうちにロナ戦は新たに3巻ほど発売され、そこには最強にして無敵なドラルクはもう二度と現れないだろうと書かれていたようだ。
    なんたることだ!!
    「失礼お嬢さん。赤く美しいバラをいただけるかな?そこにある全部!」
    「ぜ、全部ですか?プレゼント用にですか?」
    「我が最大のライバルであり、宿敵のロナルド君にね」
    そう言うとお嬢さんは急いでショーウィンドウにある赤いバラを全て取り出し、見事な手際で50本ものバラを包みこんだ。
    「リボンは何色にしましょうか。紫色がいいですかね?」
    「そうだね、そうしよう」
    そのやりとりを我が愛しの使い魔はニコニコと微笑みながら私の頭上から覗き込んでいた。

    日が昇るのが遅くなった。
    下等な吸血鬼も、高等なポンチ吸血鬼も活動時間が増え、退治時間が伸びる。
    VRCへの引き渡しが終わり、一息つこうと自販機へ向かった。
    息が白い。
    自販機で買った暖かいココアをぐっと握りしめる。早く飲まないとこれもきっと冷え切ってしまうだろう。
    「どうしたロナルド。飲まないのか?」
    「ヒナイチか。お疲れ」
    「お疲れ様。私もいいか?」
    「ああ、ごめん。」
    ガコンっと先程まで騒がしかった公園に音が響いた。
    ヒナイチは間髪入れずごくごくとココアを飲み始め、真っ白な息を吐き出した。
    「美味しい」
    「そうだな」
    「お前もせっかく買ったんだから早く飲め」
    「ああ」
    促され、今日は温かいココアを口に含めた。
    「うまいな」
    「ああ」
    公園の静かさに音はすぐかき消される。
    「メビヤツ達は元気か?」
    「ああ、キンデメと死のゲームは相変わらず小言が多いけどな」
    「そうか」
    2人でポツポツと話をして別れた。
    ヒナイチはドラルクがいなくなってから事務所にあまり顔を出さなくなっていた。
    クッキーがないからしょうがない。
    ゆっくりとココアは冷めていった。
    「マスターから弁当受け取ったら帰るか...」

    駅前の花屋でバラを買ったのは間違えであった。
    そもそも50本の花束って意外と重い。その上目立つ。もちろん目立つのは悪い気がしない。だが花束をヒイヒイ言いながら運んでいるのはあまりにも無様だ。
    「あれドラドラちゃんじゃない?」
    「えっ!ほんとだ!」
    「バラ運んでる」
    などとシンヨコ住民の声が聞こえる。
    そうですよ。私がドラドラちゃんです。
    誰か運ぶの手伝ってくれ。
    「ジョン、宅配すればよかったかな」
    「ヌンヌヌヌ」
    「それじゃあ意味がないって?はぁ...まあその通りか」
    「ヌヌヌヌヌン ヌヌヌヌヌヌ」
    「そうだね。早く帰ろう」
    この5年間、いろんなことがあった。
    海に潜ったり山に登ったり、一面の花畑を見るためにそれを飛び、野をかけた。
    「ロナルド君に話したいことがたくさんあるね」
    「ヌン」
    「彼がいれば楽だったこともあったな」
    「ヌン」
    「きっともっと面白かったんだろうな」
    「ヌン」
    「見せたいものがたくさんあったな」
    「ヌン」
    なんだか足が軽い。なぜか街が色づいて見える。
    世界中を見て回った。沢山綺麗なものを見た。面白いものを見てきた。沢山笑って、沢山遊んだ。みんな私を大切にしてくれた。
    でもなぜか、今が一番色鮮やかだ。
    「早く帰ろう。ジョン」
    「ヌン!」
    「早く彼に会いたい」

    マスターから弁当を受け取り、静かな道を歩く。
    もう少しで夜が明けて朝を迎える。
    夜にしか行動しない吸血鬼達も寝静まる準備を始め、朝早く行動し始める人間達ばかりの時間帯だ。
    飲みきらなかったココアはもう飲む気にはなれない。キンデメや死のゲームにはまた小言を言われるだろう。
    毎日たくさんの人に心配ばかりかけて生きている。一歩足を踏み出すごとに土台がぐらぐらと揺れ、いつ土台ごと自分が崩れてしまわないか不安になる。情けない。
    5年間、あいつがいないと言うこと以外特に変わり用のない生活をしてきたつもりだ。いつものように退治して、執筆して、泥にまみれ、眠る。
    ただ、あいつがいなかっただけだ。
    「早く帰ろう」

    ロナルドが事務所を構えるビルの前に立つと何か違和感があった。いつもほぼ無音のビルに音がする。
    階段を登ると何やら聞き覚えのある声。
    真っ暗であるはずの廊下に光が差し、扉の前には赤い花びらが数枚散らばっていた。
    鍵の開いた扉を開けるとドラルクがバラを両手で抱え、ソファに座っていた。
    「おかえり」
    「ただいま」
    ロナルドはただただ自分の顔が熱くなっているのを感じていた。
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