ごめんねの代わりに手を繋いで帰ろうきっかけは本当に些細なことだった。
いや、もはや些細だとかそういうものですらない。実にくだらない、子供じみた意地の張り合いだ。
されどもお互いに引くことも譲ることもできず、だんまりを決め込んだままあてもなく冬の人込みを歩いている。すれ違う人々はするりと僕達を避けて視界から消えていく。
いつもなら僕の左には百之助がいるのに、今はその姿はおろか気配を感じることもできない。
ちら、と後ろを振り返らずに、さりげなく視線をやると、百之助は目線を下に落としたまま僕の少し後ろをのたのたと歩いていた。じわじわと離れては、たまに追い付いて微妙な距離を保つ。
周りから見たら、今の僕たちは全くの他人だろう。
ふっと呼吸に合わせて白い息が出る。
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