硬い話「あ……?」
「おう」
隆景がレッスン部屋のドアを開けると、敦豪が一人床に座ってストレッチをしていた。有名スポーツメーカーのロゴがついた上下の服。職業柄運動する機会が多いからなのか、敦豪のスポーツウェア姿は隆景よりも様になっている。
しかし、その敦豪の姿がスタイリッシュだろうと、そうでなかろうと隆景としてはどうでもよかった。否、どうでもいいとまではいかないが、それ以上に敦豪の存在自体に違和感を覚えていたのだ。
常に(常にではないが、イメージというもの)遅刻してくるのが敦豪である。それが誰よりも早くやってくるなんて、珍しいこともあるものだと思いながら、隆景も敦豪がいる鏡の前まで足を進めた。
「おい」
「あぁ?」
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