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    dach0000023

    @dach0000023

    ここは僕の性癖の煮凝りを貯める鍋。
    @dach0000023 のR指定作品隔離場所。
    主に企画系の絵、文を記載している。

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    dach0000023

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    アウルスがフィールドワークでちょっと痛い目に遭った話

    #ロンダールの逆さ塔
    rondalUpside-downTower

    フィールドワークで危なかった話 アウルスがその洞窟を探索するのは久しぶりだった。前回探索時に洞窟奥地に特殊な藻の発生を確認したので、その成長を待ってから比較・検証を行うつもりでいたからである。複雑に曲がりくねった洞窟はあちこちに分岐していたが、アウルスは迷うことなく望む場所へ進んでいった。どの分岐が何処へ繋がるかは前回の探索で記録がある。その記録を丸ごと頭に叩き込んでの来訪であれば、どれだけ複雑な道であれどアウルスには容易かった。
     洞窟の深層に差し掛かった。観察を予定していた藻の観測地点まであと少し、というところでアウルスは洞窟内の異変に気付く。前回の観測では、今いる地点はそれほど狭くはなかったはずだ。嫌な予感がする。杖を構え、数歩下がる。ず、と壁が動いたように見えた。
     強く地面を蹴りつけて飛び上がる。その後を目掛け、数本の触手が折り重なるように突っ込んできた。触手の根元は先ほどの壁に繋がっている。けれど本体は隠されているのか、暗闇に慣れたアウルスにもわからない。一先ず距離を取ろうと身体を上下に反転させ、洞窟の天井を蹴りつけた。推進を得た身体は水を切って進むが、かく、と止まる。振り向いたアウルスの足首には細い触手が巻き付いていた。
    「っ……!」
     きつく巻き付いた触手に眉を顰め、切断魔法で切り落とす。柔らかな触手はぶつりと切れて落ちたが、その数秒の停滞が不味かった。アウルスの背後にはゆらゆらと踊る影がいる。
    「ぐ、…………!」
     肉の詰まった触手は背後からアウルスの背中を打ち据えた。鈍い衝撃と痛みに呻く。離れた距離は背中を撃たれた衝撃と勢いで大きく巻き戻る。地面に打ち付けられると思った身体は柔らかな何かに捕らえられて失速した。アウルスの腹に、腕に触手が這い回ってその身体を支えている。触手はいつの間にか洞窟の天井や地面にまでその腕を伸ばし洞窟を覆い始めていた。アウルスは自身の失態を嘆く前に、どうにかこの状況を脱さねばと策を練る。左腕は胴と一纏めに巻き付かれて動かせないが、右腕はまだ隙さえ見つかれば抜け出せる。杖を離していないのも幸いだった。今はこの生き物を刺激しないように大人しくする。反撃のために息を潜めていると、新しい触手がいくつか伸びてきた。触手はアウルスの身体をずるずると擦り上げ、探るように動く。その動きが不快で身じろぎをすれば、獲物が逃げると察知した触手が締め上げてきた。
    「ッふぐ、!」
     ごぼ、と苦しさにアウルスの口から泡がこぼれる。ふらふらと天井に浮かぶ泡に、触手が嬉々としてその腕を伸ばした。
     ――好気性生物か。アウルスが触手の特徴に目を細める。ふらり、とアウルスの目前に触手が一つ差し出された。ゆらゆらと揺れるばかりの触手の意図など読みようがない。アウルスがじっとその動きを睨んでいると、触手はぐいぐいとその先端をアウルスの口元へ押し付けた。どうにも口内へ押し入ろうとしているらしい。侵入を拒んで口元を引き結んでいると、焦れたらしい触手はアウルスの喉にその腕を一つ巻き付けて、容赦なく締め上げる。同時に身体を戒める触手までぎりぎりと締め付けを強めてきた。強い圧迫にあちこちの骨が軋む。
    「ッ、ぐ……っか、は、ぁ……!」
     きつい締め付けに耐え切れず、苦し気にアウルスは泡を吐いた。痛みと苦しさを逃がそうと喉が反る。その開いた口に、触手がずるりと滑り込んだ。
    「う、!? ぉ、ご、んぐ……ッ!」
     口内に入り込んだ触手は容赦がなく、喉奥や上顎を好き勝手撫でまわす。気持ちが悪い。生理的嫌悪でアウルスの眉根が寄った。海水のしょっぱさと空気に触れた触手が僅かに分泌する粘液の苦みがアウルスの口内を満たすが、吐き出そうと舌で押し返すも力の差は歴然だった。ちかちかと星の散る視界に窒息の危機を感じる。アウルスは辛うじて動く右手首を使い、まだ握っていた杖の先端を触手の一本に押し当てた。杖の先から小さく光を走らせ、触手の上を滑らせる。光は火花のように触手の表面を走り、蠢く腕の下へ上へ動き回った。その間にもアウルスの口を犯す触手は止まることなく、喉の奥を狙うようにつつきまわしている。アウルスは吐き気に耐えながら、光の行く先を目で追った。天井、壁と彼方此方を走った光は。やがて壁の根元に吸い込まれて消える。
     アウルスは途切れそうな意識を集中させ、杖を握りなおした。右腕を捕える触手に杖の先端を押し当て、切断の魔法を放つ。意思を持ってまきついていた触手は肉の塊となってだらりとアウルスの腕にまとわりついた。獲物の抵抗を次の触手が制圧する前に、アウルスはある地点へ杖を向ける。先ほどの光が吸い込まれた場所へ。意識を集中して下から上に杖を振り上げる。ばき、と空間が凍るように壁を走る肉の下から自形結晶がせり上がる。途端、洞窟内に金切声のような、耳を裂くような奇声が鳴り響いた。アウルスはとどめとばかりに再び杖を振り上げる。ばき、ばきと成長する結晶は触手の根を引き裂いた。アウルスを捕えた触手は一度二度痙攣し、最後のあがきとばかりに獲物を締め上げた後だらりと力を失った。
     締め付けから解放されたアウルスは、口内に残る触手を引き抜いて洞窟の床に降り立つ。全身の痛みと眩暈でしゃがみ込みたかったが、この生き物の完全な絶命を確認するまでは油断が出来なかった。痛む身体を引きずり、結晶の根元を確認する。
     結晶に引き裂かれているが、筋肉質な円筒状の本体はピクリとも動かない。恐らくはイソギンチャクのような魔物だろう。初めのうちに気が付かなかったのは擬態能力のようなものが原因だ。壁面や床に伏している触手は初めと違い、その肉色の本体をあちこちに転がしている。全貌が見えるようになった今、洞窟の壁や天井の半分以上を覆い隠してたその姿は異様に見えた。
    「……ッ、は、はッ、ぁ…………」
     敵対した生き物の絶命を確認して、アウルスの身体に痛みが思い出された。よろよろと触手のない洞窟の壁面まで伝い歩くと、その下にしゃがみ込んだ。ずきずきと痛む肋骨は、強い締め付けのせいでひびでも入っているのかもしれない。逆さ塔への帰還後の医務室行きは免れないか、と皮肉まじりに笑う。すこし休んで、散らばった荷物をまとめたら一度撤退した方がいい。アウルスはそう考えて、杖を抱え込むように目を閉じた。少しでも早く体力が回復することを想いながら。
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