Good-bye Snow Whiteさよなら、スノウホワイト
まったく、恋する女ってのは綺麗なもんだ───。
白魚の様な指先が、天に向かって伸ばされて。
温かく柔らかで、無防備な雛の子でも包む様にしてその掌に載せるのは、真逆の無機質な冷たさなのだから、マルコは鼻を啜って自分の愛用のブランケットを肩に羽織直すのだった。
「トキよい、雪にはしゃぐ気持ちは分からないでもないけどさ、風邪引いちまうよ?」
「あら、マルコ。ごめんなさい、起こしてしまったかしら」
「見習いの朝は早いんだ、気にすんな」
まだ、光月おでんがトキと共に船に乗っていた頃の話だ。
空には月がまだ冴えざえと残っていたが、青みがかった銀の皿の下では昨日の夜から雪が止むことなく降り続けていた。さくり、とブーツを踏み出せば甲板に跡がくっきりと付く。そのまま歩み寄って、華奢な掌に自分の手袋を外して付けてやれば鼻の先を仄かに赤くした女が瞳を瞬かせた後、少女の様に屈託なく笑う。
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