当たり前を噛み締めていつもは顔を見た途端に対戦を申し込んでくる南沢が、樫尾と目が合っても何も言わずに去ってしまったのが引っかかった。
別に寂しかったわけではなく、らしくないと思ったから樫尾から声をかけたのだが、南沢は「あー、ごめんなー、今日はそんな気分じゃないんだわ」と断ってきたのだ。
違和感を覚えたのは樫尾だけではなく、徐々に周りから「今日の南沢、元気なくない?」と言う声が聞こえてきて、樫尾はようやく心配になる。
樫尾はもう一度南沢に声をかけてみた。
「あの……体調悪いんじゃないんですか?」
「え? いや、元気だよ? あ、オレが対戦したい気分じゃないって言ったから、気にしてくれたんだ。でも、だいじょーぶだから!」
大丈夫、という南沢は明らかに空元気だった。
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