これは場地さんと出会って二度目の夏に差し掛かろうかって時の話だ。学校帰りに見上げる空が橙色に染まるのもだいぶ遅くなり、肌を撫でていく風はぬるんだ熱気を孕んでる。
もうすぐ夏が来る。そう思った途端、ふわふわしたむず痒さが全身を巡って走り出したいような衝動に駆られた。そうなる理由なんてただ一つ、場地さんと出会って全部が変わったオレの世界。その流れのなか、今年の夏も場地さんがいるってだけで浮かれるなって方が無理な話だろ。
場地さん、少しはオレのことも構ってくれっかな。できればその……、個人的に。そんな自分勝手な願いをこっそり抱いてしまうくらい、オレは少しでも多く場地圭介の傍にいたかった。
「じゃーな、千冬」
25173