cherry stem(🎙️×🚽×🎙️) ※R15『桜桃のヘタを舌だけで結べる人はキスが上手い』
そんな事をネットか何かで知ったのを思い出した時には、買い物かごにサクランボのパックをひとつ入れていた。
というのも、あのジジイは事あるごとにキスしてやろうと言うものだから。
ちょっとした疑問からの興味本意は、きっとクライゴア譲りだなと苦笑した。
「ほう、サクランボとは珍しいな」
「アー、マア、安かったノデ」
夕食後のデザートに、ガラスの小さな器に数房盛ったサクランボを出した。
理由はぎこちなく誤魔化して───いやなんかニヤついてるぞこのクソジジイ。
「まあお前の事だ、これが見たかったのだろう」
「ハ、」
ひょいとサクランボを一房つまんで、ぱくり。
小さく甘い実を味わったなら、種はティッシュに包んで捨てる。
……ちょい、とサクランボのヘタを目の前でちらつかされて『苛ついた』。
「ワ、解ってンナラとっととヤレヨ」
「じゃあまずは普通にな」
クライゴアが、サクランボのヘタを口に放り込んだ。
そのまま何やらもごもごと口内を動かして、べ、と舌を出す。
………見事な緑色の結び目。
ああ、やっぱ上手いんだなとついつい見入る。
「さて、ヘタはもうひとつある。
ちょっと面白い事をしてやろう、こっちに来なさいマイク」
「 ハイ、クライゴア」
言われるがままに傍に寄って、こっちを向きなさいと顔を向けたら、
ちゅう、と突然のキス。
「 」
「ん、んぅ」
こら暴れるな、とばかりに顔を押さえられてしまった。
口内に舌を押し込まれ、ジブンの舌を絡め取られる。
微かな異物感、まさかサクランボのヘタか。
にち、くちゅ、と水音が響く。
テレビの音はぼやけて、聴覚センサを刺激する滑ついた音がゾクゾクとコアをくすぐった。
虚空を泳いでいた両手をなんとかクライゴアの肩に落ち着かせて、こっちもこっちで舌をどうにか絡ませにいく。
「っん ぅ……、は、ぁ」
「ン ン、ッ、プハ……、」
やっと口を離されたと同時、ぽとりと床に落ちたもの。
サクランボのヘタ。
───蝶結び。
「……ハァ」
「ふふ、互いにキスが上手い証拠だな」
「ッ、バカジャネエノ………」
お陰でお互いに『その気』になってしまったようで。
取り敢えずの第一ラウンドは風呂場で決定した。
………
……
…
(実は後ろ手で蝶結びにしたヘタを口に含んだ、と言ったら絶対怒るだろうから、これは秘密だぞ)
〆