Overture ——プツッ。
十一月八日、昼の十二時半を過ぎた頃。薄暗い部屋でテレビを眺めていた男はハッと我に返ると苦々しげな表情でリモコンの電源ボタンを押し、言葉を吐き捨てた。
「全く、一課も爆処も子供に何てことをさせているんだ!」
彼は何故こんなにも怒っているのか。それを説明するには少々時間を戻さねばならない。
警察車両が爆発したとの一報が入ったのは昨夜のこと。それもただの事故ではなく、二件の更なる爆破が予告された連続爆破事件だという。これだけでもかなりの一大事だが、更に許せないのはこの凶悪な事件を企てた爆弾魔が三年前と七年前にも同様の爆破事件を起こし、相次いでこの男、——降谷の友人を二人も奪った人物だということだ。無論、こんな報告を受けては現役の警察官である降谷自身も捜査に加わり何としても犯人を挙げたいところであるが、公安に属する彼は現在とある組織に潜入しているため、表立って活動するわけにもいかずやむなくテレビ中継で事件の行方を見守っていた。
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