おまけちびごくさん 後日談
「えっ、あのご都合なんちゃらってやつ、宇髄先生もかかってたんですか?」
先日、煉獄が小さくなる忌まわしい事件の被害者が他にもいたことに炭治郎は驚いた。
「ああ、宇髄の方が近くでくらった分、効いていたみたいだな!」
「はぇー……小さい宇髄先生かぁ。どうですか?可愛かったですか?」
なんせ、宇髄も煉獄に負けない美貌の持ち主だ。
きっと可愛い美少年になった事だろうと想像する炭治郎に、煉獄は「可愛くはなかったな!」と、歯切れ良く言った。
「え?」
「小学生の終わりの頃か中学生の頃だと本人は言ってたが、普段の俺くらい大きくて可愛くはなかった!」
「あぁ……」
たしかにあの高身長の宇髄なら、小学生の時点でもかなり発育は良いだろう。
「……ランドセル似合わなさそうですね」
「俺も思った」
ウフフ、アハハと2人で和やかに笑っていたら、そういえばと煉獄が口を開いた。
「何やら胡蝶先生が、他の妖怪を退治するのに炭治郎に手伝って欲しいと言っていた」
「え?俺ですか?」
「うん。しょくしゅがどうとか言ってたな…」
「職種?まぁ、俺でお役に立てるなら手伝いますよ」
パン職人が妖怪にどう役立つのかわからなかったが、困っている人がいるならと炭治郎は快く頷いたが──。
その後、胡蝶の妖怪退治の助手として、触手にぬるぬるのぐちゃぐちゃにされて恥ずかしい目にあったり、淫紋をつけられたり壁尻にはまったりする事になるをまだ知らなかった。
◇◇◇
狼の嫁取り 後日談
些細なことで初めて夫婦喧嘩をした。
頭を冷やすため、今夜は別々に眠ろうと寝室に寝具を取りに向かうと、それを見た炭治郎が驚きに目を見張った。
みるみる涙の膜がはる目を見て、煉獄はウッと詰まった。
営み中に泣かせるのは好きだが、喧嘩で泣かせるのは本意ではない。
いっそ謝ってしまおうかと心が傾いた時──。
「うそつき!」
炭治郎がそう叫んで、床をダンと踏み鳴らした。
てっきり泣くのかと思っていた炭治郎は、癇癪を爆発させたように「嘘つき!嘘つき!」と叫び耳は後方に下がっていた。
スタンピングに下がった耳は、兎がかなり怒っている時の特徴だ。
急な激しい炭治郎の怒りと、嘘つきの意味が解らず煉獄は戸惑った。
「ちょっと、落ち着きなさい炭治郎……」
宥めようとする煉獄を恨みがましい目つきでキッと睨んだ炭治郎は、
「お嫁にきたら毎日抱くって言ったくせに!可愛がってくれるって言ったくせに!うそつき!うそつき!」と叫んで床を踏み鳴らし叫んだ。
わあわあと泣く炭治郎に呆然とした煉獄は、しばし惚けたのちにハッとして炭治郎を抱きしめた。
「すまん、約束したんだったな」
炭治郎を一人で寝かせたりしないから、と背中をなでてあやす。
「夫婦の部屋もすぐ挿れてあげるから」と機嫌をとると、むずかりながらも何とか落ち着いた。
「機嫌なおしてくれたか?」煉獄が顔を覗き込んで聞くと、スンと鼻をすすって目を赤くしながら頷いた。
「可愛くてびっくりした……」
動揺の残り、心拍数の上がった煉獄の胸にごつごつと額をぶつける炭治郎を抱え、仲直りしようといって、二人でベッドに上がったときには、喧嘩の原因はすっかり忘れ去っていた。
次の日。
冷静になった炭治郎は恥ずかしさと、煉獄の上でうさぎ跳びしたせいで筋肉痛に泣き、煉獄はさっそく尻に敷かれてきたなと独りごちた。