日常疲れたな…
上質なソファに身を埋めながら息をつく。
互いに同じ場所を拠点にしながらも顔を合わせることもなく2週間。
目を瞑ると睡魔が手招きをし始めて大人しくそれに身を委ねていた。
「めぐみー、いるー?」
鍵を開ける音と共に聞こえた声に胡乱げに瞼を上げると、いつもの目隠しを気怠そうに下げたその人がリビングへ現れた。
「いますよ、一応…」
「一応って何よ、いるじゃん」
と、くつくつと含み笑いを携えて隣に腰掛ける蒼い瞳。
「こんなんでも疲れてんですよ、眠いし腹も減ってるけどなんもしたくない程度には」
自他ともに最強と言われる相手に疲れたなどとほざくのはどうかと思うが仕方ないものは仕方ない。
ソファに腰掛け抱き寄せられた肩になんの弄いもなくすり寄るとその温かな体温に身を委ねた。
「そっか、お疲れ様。お腹空いてるならなんか頼もうか、僕も腹ぺこだし」
労いの言葉を聞きながらポケットの端末に手を伸ばそうとする左手を制し、その膝上にのし掛かる。
「俺も腹ぺこです、餓死しそうなレベルで」
そう言って逞しい首筋に腕を絡めながら、形の良い鼻筋にかぷり、と歯を立てる。
「ふふ、僕もだよ」
そう言ってお返しだ、とでも言うように鼻先を甘噛みされた。
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「っふ…っ、んんっ、」
座位のまま舌を絡め、触れられなった時間を確かめ合う。
快感によって作り変えられた身体は誘うように腰を揺らすが、互いに時間をかけて味わいたいという趣向か意地か分からないものを孕んでいた。
「ほら、して欲しいところ見せて?めぐみ」
「っはい…っ」
部屋着のTシャツをたくし上げ、暫く触れられていない乳首は期待だけで主張していた。
「下じゃなくて乳首が良いの?やらしいね」
口端を軽く歪めながら、赤く揺らめく舌を這わせる蒼玉の瞳。
「っんん…、っは、っあぁ…っ」
這わせた途端押し付けるように身体を揺らめかせ快感に身を委ねる様に、ズボン越しに互いの芯を擦り付け合う。
「っあ、んんっ…せん、せっ…」
強請る声色に応える様に硬くなった芯を吸い上げ、時折歯を立てながら反対側のそれも同様に攻めていく。
すると次第に首筋に回っていた腕がその白髪を抱える様に自ら快感を高めていく。
「っあ…、まっ、て…っい、く…っ!!」
「いいよ、我慢しないで」
ぎゅ、と腕に込められた力が弛緩すると、頭上から甘く蕩けた笑みが降ってくる。
「ベッド行こうね、僕も我慢出来ないし」
飛ばされた理性をかき集める余裕などなく、年相応の性欲を持ち合わせた身体はひたすらに愛しい相手を求める。
しとどに濡れた其処を更に誘う様に、先刻のそれよりも甘く響く声で呼び掛けた。
「っも、欲しい…っ、先生っ…!」
「…そんな顔、僕以外に見せたら殺すからね」
物騒な台詞ではあるが棘などどこにも見受けられない声色に、恵は薄く笑みを浮かべる。
「そんなことするくらいなら自分で死にますよ…っ、っっあ!!」
言い終わるや否や濡れそぼった其処に突き立てられる欲に思考は止まる。
その熱を受けながら2週間と言う期間が自分だけを制していたのではないのだとのぼせた頭で片隅に浮かべた。
「っあ、めぐみ…っ、めぐ、」
「せん、せ…っ、ぁあっ、んんっ、…っ、」
吐息だけを行き来させて互いの身体を掻き抱くと、制する間もなくそれぞれに絶頂を迎えた。
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「ん…」
緩やかな身体の怠さを携えたまま、差し込む陽の光に薄く瞳を開ける。
同時にリビングからバターを孕む甘い香りが鼻腔を擽り、連勤明けはいつも吐きそうなほど甘いフレンチトーストを食べていたな、と蒼い瞳を輝かせる彼を思い出させる。
そのくせ別にホットサンドを用意してくれているいつもの手間を思い、愛されている実感とそんな愛しさを同時に噛み締めた。
「めぐー、起きたならご飯たべよー」
気配を察したのか寝室の入り口から顔を覗かせた彼を見て、いっそうその翡翠に愛しさを滲ませた。
「はい、おはようございます、五条さん」
end.