邯鄲の夢『邯鄲の夢』
これは、とある群像劇の一節に過ぎない。
96階層、全てはここから始まった。
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『九十六階層』
ここは無法地帯。
そういう場所だからこそ、人を惹きつけてやまない場所であり、人をダメにしてしまう場所でもある事、ゆめゆめ忘れることのないように。
ある目的でこの場所に来てしまった羊の令嬢とその狼従者、何でも屋を営んでいる青年とその彼に拾われた青年、そして血を求めてやってきた吸血鬼とそれに仕える人形の少女。
各々の選択で無法地帯を駆け回っていたけれど、この階層の元締めにより捕まり見せ物にされてしまう。
この後どうなったのかはまたこれからの話ーー
『あいべや』
ここは復讐を誓う者たちの集い。
1人は目と走る足を奪われ、1人は両親を奪われ、1人は心に傷を負い大切な人を奪われた。
しかし、集ったはいいがこのあいべや、かなり癖のある一筋縄ではいかない部屋だったのだ。
師匠の代わりに殺し屋をしている少女とその師匠で医者もしている男性、そして闇医者の少年とそのサポートをしている男の娘、それからなんと九十六階層の元締めである男と同じ階層の店で働く女性。この3組が一堂に会したわけだ。
とはいえ、部屋の難題にもクリアしないといけないから色々大変だったみたいだ。
しかし彼らは約束をする。
復讐の為に、何でも屋をする男を殺すのだとね。
『風狂夜魄』
復讐する者される者。
平穏は崩された。自分の求める人物の幻覚によって。ある者は幸せな幻覚、ある者は責められる幻覚、またある者は初恋の忘れられぬ幻覚。
「あいべや」で復讐を誓った者達は苦しみ、もがき、また喜び、幻覚を討ち払った後、覚悟を決めた表情で集った面々は復讐すべき人間を前にする。
もう、後戻りはできない。
ここでこの男を殺さなければ。
そうして復讐劇の幕は雪豹の少女によって切って落とされたのだ。
片割れを残して欠けた月は海に沈んだ。
『海底牢月』
取り残された片割れの悲劇、憎しみの連鎖。
平穏が訪れた、そう思っていたのは束の間の夢だった。悪いニュースはすぐに知れ渡ってしまう。これは、望んでいた結果なのだろうか?……それとも?
復讐を誓い、集い、復讐を果たした面々は再び共闘し、対峙するだろう。月と共にあれなかった変わり果ててしまったイルカを。
ここで彼を止めなくては。
何が悪で、何が正しいのか。
それを照らす月はもう見えない。
『杯中蛇影』
黒く深く、ぐちゃぐちゃに塗りつぶされた心は傷を求める。
己を罰して欲しい。イルカを失った蛇はすっかり変わってしまった。彼はもう己が傷つく事で癒されようとしている。そんな事をしたって傷は増えてゆくばかりなのに……
今回彼の夢を巡ってきた者達は「あいべや」から登場している師弟と、入院している狐の少女と丈夫で口数の少ない男の子と、動物とお友達の少年と元気で食べることが好きそうな少女。
果たして暗闇に沈んでしまった彼を救う事ができるのか。そして人造人間達の行く末はどうなるのか……
そして彼は未来を見る事が出来るのか。
『羊很狼貪』
場所は再び戻って無法地帯の96階層。
今宵コロシアムが開かれる。
羊の令嬢と、その狼従者。この2人は堕ちてしまったようで。令嬢は恐怖に駆られるまま、幻影に怯えながら、ただ楽になりたかった。従者はただ令嬢の願いを叶え続けた。けれどそれはすれ違う。
このコロシアムに招待されし強者は96階層の元締めとその恋人の女性、ヤクザで組の頭である獅子とその愛人の淫魔の少年、キョンシーの青年と占い師の女性の少し怪しい雰囲気の2人。
果たして女神はどちらに微笑むのか?
一途に思っていた気持ちは交わる事なく平行線を辿ってゆく。
どこで選択肢を間違えたのか、羊はただ彷徨うばかり。
『天狼雪獄』
太陽がジリジリと肌を焼く。
そんな時期にアウトドアブームが来る。
あの師弟が堕ちた。歪みを溜めたせいか、願いを叶えたと同時に堕ちてしまった。師は落ち込むが弟子はいつも通り。支え支えられ此度も行くだろう。
アウトドアやサバイバルに参加した者は、始まりの「九十六階層」にいた吸血鬼とそれに仕える人形の少女、そして雪豹の少年と気の弱そうな少女に、コロシアムでも登場したキョンシーの青年と占い師の女性。
夏に突如雪が降る。
この雪を溶かし、平穏を再び手にするのは誰だ?
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『私達の物語は、これでおしまいだ。ここから先は、君達の物語。その物語の結末が、どうか笑顔の溢れる素晴らしいものでありますように』
こうして闇を生きる彼らの物語はいくつもの道を辿りながら続いてゆく。
繋がり、別れ、堕ちて、散って、また咲いて。
これは裏の世界で生きる者達のほんの一部の物語に過ぎない。それでも、これを読んで記憶に残してくれたならとても嬉しく思う。
中にはもう会えない人もいるかもしれないが、彼らは今でも精一杯生きている。物語を知ってくれている人がいる事で心が救われたり、何かの気付きを得てくれてたら嬉しいと思ったり、ここで頑張りを見てもらえた!と嬉しくなるものだから。
まぁ、当てはまらない人も中にはいるかもしれないがね……
それでは、ここまでこの物語を読んでくれてありがとう。
最後に。この物語を私に教え、紡ぎ、語り継ぐこと許してくれた人にも感謝を。
これは、4文字の物語。