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    あすぺら

    良からぬ絵はこちらにおいていきます
    記念絵のラフとかも載せていくかもです

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    あすぺら

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    ユーニィとフィオルの話
    みんなを守って傷ついてしまったフィオルのお話です

    あなたへの贈り物なにか夢を見ていた。私に友達が出来たり、仲間が出来たり、選ばれし者、だとか、そんなおおごとに付き合わされたり。
    柄にもなく、自分の心に蓋をして、仲間を守るとか名目を付けて、自分を危険にさらしたり。
    その中で私が壊れたって、しょうがないんだ。私って、こうしないと生きる意味も、価値もないから。
    私って、向いてないものを頑張りつづけたら、ああなるのかな。嫌な夢だった。

    いや、あれは夢じゃなかったんだ。
    それに私が気付くと、恐ろしく重いまぶたを開いた。
    グランポートの宿屋の天井。昼下がりの日差しが、景色を忘れた私の目をついた。
    あぁ、眩しいな。と思うと、私の身体が痛む感覚が、急に広がってきた。
    瓦礫から拾ってきたぬいぐるみのような自分の手や、痺れた感覚しかない両足。
    私のそれらには包帯ががんじがらめに巻かれて、そこには赤色と黄色のシミがてんてんとついている。
    ははっ、こんなに迷惑かけさせて。死ねばよかったのに。
    そんなことをぼそっと、私は言う。
    そうして上体を起こして、部屋を見回す。

    机には、「フィオルへ」と書かれた、包装をされた本があった。
    へぇ、誰へのプレゼントだろう。たぶん、私のかな。
    机には手が伸びない、痛みに勝てるほど、その本に興味がないから。
    上体は起こしたけど、何にもできないや。これからどうするんだろう、私って。
    気が付くと、私は寝てしまったみたいだ。

    「ーー!きこえ…ないか。今日も、身体を拭くね。」
    はつらつな声が、寝ていた私を呼んだ。今日も?もしかして私、ずっと寝ていたのかな。
    「包帯、外すね。痛かったらごめん。」するりと私の包帯がとれて、柔らかい濡れた布が私の手足を拭う。
    「あんなにきれいだったのに、私のせいで。」声の主は、私の身体を拭うとぼそっと呟く。
    彼女は続けると、背中や胸、首筋とかを拭い始める。普通は触られるとぞくりとする所のはずなのに。この子に触れられるのは不愉快な感じがしなかった。
    私の身体を拭き終えると、彼女は言葉を続けた。聞こえてるかもわからない私に対して。
    「ごめんね。いっぱいおしゃれしたかったよね。」
    「いつか君が起きたら、音楽のこと、おしゃれのこと、たっくさんお話したいんだ。」
    今でもいいよ?と私は口を開く。眼の前のはつらつな少女は、驚いてベッドから転がり落ちた。
    私は転がり落ちた少女に驚き、慌てて少女に手を伸ばした。
    だけど、フィオルの身体はちゃんと私を支えてくれない。
    転けたフィオルは少女に覆いかぶさるように、墜落した。
    フィオルと少女の目が合うと、あははと少女は笑う。
    少し間が開くと、慣れた手付きで少女はフィオルをベッドに座らせた。
    「意識戻ってたんだ。いつからかな?」一呼吸置いて、少女は私に聞いてきた。
    「たぶん、今日の昼頃。」私は曖昧な返事をする。だって、曖昧にしかわからないから。 
    ユーニィは少し口角を上げて、話を続ける。
    「そっか、そういえばだけど。」「わたしの事、覚えてたりする?」
    私ははどきりとした。覚えてなんかない。フィオルへの憎悪と怒りしか、自分に残っているものはないから。
    私は気まずそうに話す。
    「ごめん、覚えてない。」
    少女は眉を下げて、少し寂しい表情を見せた。そして、自己紹介をした。
    「わたしね、ユーニィっていうの。」「きみの友達で、えっと…」
    ユーニィはフィオルとの思い出がたくさんあるのか、言葉を詰まらせた。
    「もしかして、ユーニィも覚えてないの?」フィオルはいじわるな笑みを浮かべて、言葉を投げてからかった。
    「ちがうよ!」顔を真っ赤にして、ユーニィは否定した。
    怒った彼女は、不機嫌そうにラッピングがされた本をフィオルに差し出した。
    「ほら!」
    怒った顔がかわいらしいな、とフィオルはにやにやとする。
    「ラッピング、開けられないよ?」フィオルはにやけた顔で、ユーニィをじっと見つめる。
    「もう、わかったよ。」ユーニィはそう言うと、丁寧にラッピングをといて、本の表紙をフィオルに見せる。
    厚手の表紙には、フィオルへ、ありがとう。とだけ描いてある。フィオルが表紙を見つめると、すぐにユーニィはページをめくった。
    表紙の裏と中表紙を見る限り、本の内容はどうやら洋服のカタログギフトみたいだ。
    ユーニィは向かい合って、本のページをめくろうとする。そんな彼女に、フィオルはお願いをした。
    「隣で見せてくれない?」
    ユーニィは少し驚いたが、了承してくれた。少し鼻先を赤くして、フィオルの傍に座って本を開いた。
    私はふらついた身体でユーニィに寄りかかる。
    ユーニィは小さいけどなんだか厚みがあって、寄りかかると少し汗と石鹸の匂いがして、すごく安心感があった。
    ユーニィが見せてくれた本の中には、色んな服を着た女の子の絵がたくさんあった。
    深紅に煌めくドレスや、フリルがたくさんついたゴシックスタイルのスーツ。そうそう、騎士みたいな甲冑もあった。私が頼んだら、仕立て屋がこれを作ってくれるみたい。

    私、こんなことされる価値なんてあるの?
    フィオルがふと口を開き、卑屈さを言葉にする。
    わたしは少し笑顔が曇ったけど、本をベッドの近くに置くと、太い腕でフィオルをぎゅっと抱き寄せた。
    「ごめん、わたし疲れちゃった。空も暗くなったし、一緒に寝てよ。」
    細くなって、髪の伸びたフィオルにわたしはお願いしてみる。きっとフィオルはわたしの事は思い出してくれないけど、今からでも思い出はつくりたい。

    「わかった、おやすみ。」
    そう言うと、フィオルは横たわる。海のような瞳を私に向ける。
    ユーニィはその海に視線を向けると、フィオルを抱きしめて眠りについた。
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