アーチャーは、ランサーが好きだった。
「……お前は、本当に」
呆れたように言うランサーに、アーチャーは肩をすくめてみせた。
「どうやらそのようだ。しかし、君も大概だな。こんな男と一緒にいたいだなんて、どうかしているぞ?」
「うるせえよ」
そう言って、ランサーが笑う。
それは、先ほどまでのどこか皮肉げで自嘲の混じった笑みではなくて、本当に心の底から楽しそうな笑顔だった。
「…………」
そんな彼の表情を見て―――唐突に、アーチャーは自分の中の何かが満たされていくような気がした。
聖杯戦争の最中だというのに、マスターとサーヴァントとしての信頼関係を築くどころか、互いに背中を預け合うことさえ拒否してきたというのに、それでもなお、この男は自分を信頼してくれているのかと思う。
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