潰えた夢 とても不思議で、とても寂しかった。
街を行き交う行く人が、誰も私の事を見てくれない。
それは単純に私の方を見ないという意味じゃなく、私の存在そのものが認識されていないように思えてならない。
そもそも私は、どうしてこんなところにいるんだろう。
記憶がない。
何か重要な事があった筈なのに、それが思い出せない。思い出そうとすると、頭の奥がズキズキと痛んだ。思い出してはいけないと、知らず知らずのうちに私自身が拒否しているようだった。
「あっ……」
行き交う人の中に、良く見知った背中を見つけた。胸が押しつぶされてしまいそうな不安の中で、私は泣きそうなほどに安堵した。
「お父さん!!」
縋るように、悲鳴に近い声をあげた。
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