いいねくれた数だけ自PCが文庫本になった時の冒頭一行を考える*
-琥羽玖
チッ、チッ、と、秒針の音だけが聞こえていた。今どき珍しく、アナログ時計のかかった客室だ。
-セナ
──ふわりとやわらかい感触がして意識が浮上する。
続いてやはり、ざり、と濡れた感触が頬を撫でた。朝のにおいがする。
-ディラン
──夢だとすぐにわかった。何度も見ている夢だから。
-天煌
「──逃がすな! 追え!」
暗闇の中に怒号と懐中電灯の明かりが錯綜していた。その中を駆ける影がひとつ。
-ノア
「それでは、事件の概要を説明します」
口火を切った途端、パシャパシャとシャッター音がいくつか鳴った。オフィスの一角に設けられた会見場だ。各種メディアの記者がずらりと立ち並び、明日の朝一番のニュースを、センセーショナルな事件でいかに彩るかを競い合っていた。