Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    pekeyori

    @pekeyori

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 54

    pekeyori

    ☆quiet follow

    前にもそもそ打ってた落書きからのやつがちょこっと続いたもの。のんびりメモしてたのでやんわりとみてもらえれば。ユリウスモード終わったあとの情緒の乱れは凄まじいですねはい。

    指切り 戻らないユリウスに何かあったのかと戻ったヨーコとアルカードは、未だに城の跡地を眺めるユリウスを呼んだ。しかし反応が無い。
    「ユリウス?ねぇ、大丈夫?」
     寄ってヨーコはユリウスの肩に手をやり揺すってみると漸く顔を向けた。
    「……?」
    「ユリウス……?」
     何かおかしい。ヨーコは不思議そうに見つめるユリウスに大丈夫かと聞いても分かっていない様子で少し首を傾げた。
    「ユリウス、私達の事が分かるか?」
     怪訝そうに眉を顰め始めたユリウスに今度はアルカードが尋ねた。すると、
    「……いや。誰なんだ、お前達は……」
    「……え……?」
    「…………そうか」
     アルカードは悟った様子でユリウスにここから離れようと促す。ヨーコは説明して!と少しヒステリックにアルカードへ詰め寄る。それでもこんな場所に長居するより腰を落ち着ける所で話す方がいいだろう、アルカードが提案するとヨーコもそれに従った。ユリウスは訳が分からないまま手を引かれアルカード達に付いて行った。

     
    「さぁ、説明してちょうだい」
     ホテルに到着するとヨーコは有角へと姿を変えたアルカードに詰め寄った。ユリウスもベッドに腰掛け二人を見ていた。
    「落ち着け、恐らく一年前までと同じだ」
    「それってもしかして……」
    「再び記憶喪失に陥ったのだろう。結果として今回も父……ドラキュラを討伐したのだ、そして何より……」
    「…………蒼真、くん……」
    「あぁ、知らない仲では無い。そんな相手を手に掛けたんだ、城を封印したあの時とは違った原因でも想像に容易い」
    「だからって……こんな……」
    「そうか、オレは記憶を失ったのか……」
    「現状そうなる。どこか身体に異変はあるか?」
    「いや無い。気につなる事はあるが……」
     問診のような質問に記憶を失った事を知るユリウスは、ふと疑問に思っていた事があった。

    「そこに座っている子供は誰だ?」

     そこ、と指が差し示す場所は有角とヨーコには何も見えず、誰もいない。二人は顔を見合わせたがお互いにユリウスの言う子供の姿など無い。
    「やっぱりどこか……」
    「……二人に見えないのならそうなのだろうか……」
     自分の事なのに自信が無いために信じきれない状態で、そんなユリウスを見るのは初めてだとヨーコは呟いた。
    「実際、そこに居るのならば霊的なものであるのならば俺達にも見えるはずだが……そうで無いのならやはりユリウスに異常があるとしか思えん。……本当に何ともないのか?」
     再三に渡りユリウスの身体を心配する有角にユリウス自身も自分が思うよりも深刻なのだろうかと疑うが、異常らしい異常を感じ取れない。首を横に振って見せるとそうか、と有角は溜め息を一つ漏らした。

    「でもそうね、今は休息が必要ね。ユリウスだけじゃない、私も、アルカードも。今日はもう寝て明日はゆっくり帰りましょう。全員無事に帰れるのだもの、ね?」
     ヨーコがそう言うとそうだなと有角もユリウスも頷いて答える。各々個別に部屋を取っているので二人はユリウスが使う部屋を後にした。が、
    「……何かあったらすぐ言うのよ?一人でなんでもしようと思わないでね?」
    と釘を刺しにヨーコがドアを少し開けて行って出ていく。返事も待たずに出て行く辺り、早めに休みたいのだろう事が伺える。そんな彼女にフッと笑みが溢れた。
     記憶が戻る気配は、無い。ならば思い悩み続けても仕方が無い事だ、そう思い直し目の前の問題をどうにかしようと試みた。

    「……お前は、オレの知っている奴なのか?」
    「……、…………」
     声は聞こえない。反応はあるのでこちらの声は聞こえているのだろう。姿だけで何かを話しかけている様子は見てとれるのにその声を聞く事はできなかった。
     目の前の子供は一言で言えば病的に白く美しい、だった。恐らく健康ではあるのだろうがとても色素が薄い。霊的な存在なら違和感が無いのだが本当にそういう存在なのだろうか、不思議な位ハッキリと存在がある。
     何かを発声しようと何度も話しかけているのだろう、口を動かしているが相変わらずユリウスの耳に声は届かない。
    「仕方ない、オレも記憶が無いからな。もしかしたらオレの知っていた奴なのかもしれないが本当に覚えが無い。すまないな」
    「!……っ……!」
     謝るユリウスに慌てる子供。気にするなと言った様に手を振り身振りで示す。あまりに必死の形相だったのがユリウスにはそれが意味する事を知らない。
     そういえば、と気付けば子供の正体が分からないからなんと呼べば良いのかも分からないでいた。どうしたものかと考えてると見ていると体もそうだが全体的に白い印象を受ける子供に、
    「……名前も分からないんじゃ、大変だな。お前の事を『シロ』って呼んでもいいか?」
    と提案する。シロ、なんて見た目から安直すぎる呼び方だと思ってはいるがそれ以外を今の段階で思いつく事もない。子供もそれでいいと言う様に頭を縦に振ったのでこれからはそう呼ぶ事に。
     そこまで決まってからは少し疲労が出てきたのか、溜め息も増えてきた。今日はもう休もう、ユリウスはシロに寝ると伝えるとおやすみ、と言うように口が動いていた気がした。
     ベッドに横になって目を閉じる。しかしユリウスが眠りに就く事はなかった。目が冴えていると言う訳でも無い、程よく眠気もあるのに中々入眠には至らず、寝返りを打ったり掛布を深く被ったりと試みたが駄目だった。疲れているから寝たいのにと思っているが記憶無くしたりユリウスしか見えないシロの事であったりと起きた事が多く頭も整理できていない。仕方ないからと訪れるだろう眠気を待つ事に。

     シロ、と呼ばれた子供はゴーストのような存在なのだろうか。ユリウスにしか姿が確認できないのでそれを証明する事ができない。しかしシロはそれでも良かった。
     眠る為にベッドへ横になったユリウスをジッと見つめる。声が届いてれば苦労はしなかったのかもしれないな、と愚痴を零したがそれも誰にも届かない。一人、取り残された気分にも感じても今のシロには関係無い。それでも、
    『無事で、良かった』
    届かないからこそ漏らせる言葉。
     シロはユリウスの事を知っている。不公平かもしれないが言葉が通じないのならばおあいこだ、と眠っているユリウスを見て思う。ハハ、と笑ってしまうがそれも誰にも聞こえない。取り残された気分を関係無いと思っていたが、ユリウスが眠る今誰からも認識されないシロは正真正銘一人となった。途端に酷く恐ろしいとも不安にも駆られた。早く、早く目を覚ましてくれとユリウスに願い膝を抱えて顔を押し付け、世界から視線を逸らした。



     










     
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞😭🙏👏💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works