青い花とティータイム それはバレンタインデーと名付けられた日に、ハデスがポセイドンの居城を訪れた日のこと。
ポセイドンが待つ部屋に案内されたハデスは、いつも弟と会う時には無い、テーブルの上に飾られている花が気になった。先端に青色の小さな花を数十輪咲かせている花だ。
ソファに隣合って座りながら、ポセイドンの従者が用意したアフターヌーンティーを弟と共に楽しむ。
主人とその兄の貴重な時間の邪魔にならないように、と既に退室済みの従者が用意した紅茶とケーキスタンドに乗せられた菓子は、見た目も味も相変わらず絶品だ。
弟との会話を楽しみながらもハデスの意識は時折、小さなガラスの花瓶に生けられたその青い花に向けられた。
己の知る限りでは、弟には花を飾る趣味など無かったはずだ。
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