幸せのかたち「今朝は、少し冷えますね」
早朝、朝露に濡れた土と干し草の匂いが鼻腔に訪れる。音を認識しはじめたばかりのゼルダの耳に聴き慣れた声が響く。
リトの馬宿で一晩を過ごしたゼルダは、まどろむ瞼をゆっくりと慣らしつつ開き、ベッド脇に紺色のリト服を着込んで座るリンクの姿を確認した。寝起きの主君を穏やかな表情で眺めやる彼は、すでに身支度を済ませているようだった。
昨日は、朝早くにタバンタ馬宿を発ったのち、昼頃に一旦リトの馬宿に到着した。その後リトの村ならびにヴァ・メドーの周囲を確認するため、リリトト湖の周囲を徒歩で一周ぐるりと巡ったので、ゼルダは疲労で早々に寝てしまった。調査記録の確認も十分に出来ていない。
今日はリトの村へ赴き、族長カーンと面会の上、村のはるか上まで聳える高い岩壁の頂点にて微動だにせず静かに佇むメドーのもとで、更なる調査を進める予定でいた。
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