冷たい石造りの床の上にOVERは寝そべっていた。手足は縛られている。「……おい、どういうことだこれは」
OVERは猛獣のような目で睨みつけるも目の前にいる青年は怯むことなく笑みを浮かべている。その青年の名は天ボボといった。「どういうこともなにもありませんよ。貴方に今から平和の素晴らしさを教えてあげようとしてるんです。」「ふざけんな!早くこの縄をほどきやがれ!」
OVERは吠えるがそんなことはお構いなしに天ボボは語り始めた。「いいですか?争いのない世界というのは素晴らしいことなんですよ。まず誰もが傷つくことがなくなるじゃないですか。そして誰も死なない。みんな幸せになれるのです。」
天ボボは優しい口調でそう言った。「そんなわけねぇだろ!どうせ俺を騙して殺すつもりなんだろうが!!」
OVERは必死に抵抗するもやはり手足は拘束されていて身動きがとれない。「あぁ、大丈夫ですよ。殺さないですし傷つけたりもしません。僕は平和主義者なのですから。ただちょっとだけ痛めつけさせてもらいますけどね。」「テメェ……っ!!」
怒りの形相を見せるOVERに天ボボはゆっくりと近づきながら話を続ける。「僕は貴方を殺す気なんて毛頭無いんですよ。むしろ逆でして。僕のものにしたいと思ってるんです。」「……あ?」
何言ってんだこいつという表情をするOVER。すると天ボボはおもむろに手を伸ばして彼の顎を掴む。「うぐ……」「貴方にはこれから平和についてじっくり教え込んであげますよ。もう二度と戦いたくないと思うくらいにね。」「ふざ、けんじゃねぇぞ……っ!!誰がお前なんかの言うことを聞くかってんだよ!!」
OVERはなんとか抜け出そうと暴れるもやはり無意味に終わる。そんな彼に天ボボはさらに顔を近づけた。「まぁ聞いてください。とりあえず最初は手始めにこれでも飲みましょうね。」
そう言って彼は懐から小瓶を取り出し、それをOVERの口に無理やり突っ込む。「んぶっ!?げほっ!ごほぉっ!」「ちゃんと全部飲んでくださいよー?」
口の中に広がる苦味に耐えきれず吐き出そうとするが天ボボはそれを許さない。仕方なくOVERはそれを飲み込んだ。しばらく経ってようやく吐き気が治まる。一体なんだこれは…。
「媚薬ですよ。」
OVERの心を読んだかのように天ボボが答えた。「媚薬だと?」「えぇ。気持ちよくなる薬です。これで貴方も平和の素晴らしさが分かるでしょう。」
天ボボの言葉にOVERは「はんっ!」と鼻で笑う。「平和だと?笑わせるんじゃねえ。そんなもんクソくらえだ。俺はな、血を見るのが好きなんだよ。」「……へぇ。」
天ボボの目つきが変わる。それと同時にOVERは全身が熱くなる感覚に襲われた。「な、なんだこれ……」「さっき飲ませた薬の効果ですよ。じきに効いてきますよ。」「くそっ……!」
体が火照り汗が出てくる。息遣いも荒くなり始めていた。その様子を見て天ボボはニコリと笑みを浮かべる。「そろそろ効いてきたみたいですね。」「うるせぇ……っ!こんなんで俺を屈服できると思ったら大間違いだ!」
強気に言い放つOVERだったが体は正直に反応しており股間部分が盛り上がっている。それを見て天ボボはクスッと笑いながら指先でそこに触れた。「うぁっ!?」ビクンっと体を跳ねさせるOVER。「おや?どうしました?まさか触られただけで感じちゃったんですか?」「黙れ……!調子に乗るなよこの下衆野郎がぁっ!!」怒りに任せて叫ぶOVERだが身体中を襲う快感のせいでまともに喋ることができない。「全く威勢だけはいいですね。ではこういうのはいかがでしょうか?」
そう言うなり天ボボは手に持っていた鞭でOVERの尻を思い切り叩いた。パァンッという音が響き渡る。「ああああっ!!!」
あまりの痛みに悲鳴を上げるOVER。しかし天ボボは容赦なく何度も叩き続けた。「ぐあぁっ!!やめろぉっ!!」
OVERは必死に抵抗するが縛られているせいでろくに動けずされるがままになってしまう。やがて抵抗する力すら失っていく。「ふぅ、少しやりすぎましたかね。大丈夫ですか?」
天ボボは一旦叩くのをやめるとそう声をかける。するとOVERはハァハァと呼吸を乱しながら睨みつけた。
「テメェ……っ!覚えてろよ……っ!!」
「さすがは平和の素晴らしさを理解できない野蛮人ですね。」
天ボボは呆れたようにため息をつくと今度は別の道具を手に取った。それは首輪だった。「次はこれで遊びましょうか。」
そう言って天ボボはその首輪をOVERの首にはめた。「な、何しやがんだこの変態が!!」
怒鳴りつけるも天ボボは怯むことなく、むしろ楽しそうな表情をしている。「なるほど、これはいいかもしれませんね。」
何を思ったのか、彼はOVERの腕を掴んで引っ張り始めた。「ぐっ……」
引き摺られる形で連れて行かれたのは大きな鏡の前。「さぁ、自分の姿を見てください。とても似合ってますよ。」
そう言われ、恐る恐る鏡を見たOVERは自分の姿に驚愕した。そこには犬のように鎖で繋がれ、首輪をつけた自分が映っていたのだ。「……っ!」
恥ずかしさと屈辱で顔を赤く染め、唇を強く噛んでいる。「いい格好ですね。」
天ボボは満足げに言うと鎖を引っ張ってOVERを無理やり立たせた。「ぐぁっ!」
引っ張られて苦しそうにうめき声をあげる。そんな彼を見て天ボボは微笑んだ。「今から貴方にはここで暮して貰います。」
「は……?」
OVERはポカンとした表情を浮かべた。「聞こえませんでしたか?貴方はこれからここに住まうのです。」
天ボボの言葉を聞き、彼はようやく意味を理解した。「ふざけんな!誰がお前なんかと一緒に暮らすか!」
怒気を含んだ声で叫び拒絶するも天ボボはニコニコしたまま動じない。「貴方に拒否権などありませんよ。」
鎖を引き寄せ顔を近づけてくる。そして耳元で囁く。「貴方は僕の所有物になったんですから。」「っ!?」
ゾクッと寒気が走る。こいつは危険だ。本能的にそう感じた。「それじゃあまずは部屋を案内しますね。」
天ボボはそう言うと鎖を引きながら歩き出した。「おい、待てよ!放せよ!」
OVERの言葉を無視しどんどん進んでいく。やがて一つの部屋にたどり着いた。「ここが貴方の部屋です。」
天ボボは扉を開けると中に入るよう促す。微動だにしないでいると無理やり部屋に押し込まれ床に倒れ込んだ。「うっ……」
冷たい床の感触が背中に伝わる。その冷たさに思わず身震いをした。「どうですか?僕の城は。なかなか快適でしょう?」
天ボボは笑顔で言うもOVERは不快な顔を浮かべるだけだ。「ここは地下にあるので日の光なんて当たりませんけどね。」
確かに窓もない部屋の中は真っ暗だ。しかし天ボボは気にせず話を続ける。「では食事を持ってくるので大人しくしていて下さいね。」
そう言い残すと彼は去って行った。一人残されたOVERは不安を隠すように扉を睨みつけていた。
OVERは辺りを見回す。部屋の中にはベッドやテーブル、椅子などが置いてあるだけで特に変わった様子はない。
(とりあえずあの変態野郎が戻ってくる前に逃げる方法を考えねぇと……)
だが縛られている状態のため上手く体が動かない。なんとか立ち上がろうとするがバランスを崩してしまい再び倒れてしまう。「くそっ!なんでこんな目に遭わなきゃいけねえんだよ!!」
悪態をつくが状況は変わらない。しばらくすると天ボボが食事を運んできた。「お待たせしました。さぁ、召し上がってください。」
天ボボはそう言うなり鎖を引く。「うっ……」
床に置かれたトレイの上の皿には肉料理が乗っている。匂いで判断する限り恐らく牛のステーキだろう。「ほら早く食べてください。冷めちゃいますよ。」
天ボボが急かすがOVERは頑として口を開かない。「ふぅ、仕方ありませんね。」
天ボボはため息をつくとフォークを手に取りステーキを突き刺した。そしてそれを口へと運ぶ。「美味しいですよ。」
そう言って天ボボはOVERの口に無理やりステーキを押し込むと無理矢理咀しゃくさせる。「ぐっ……!」
飲み込みたくないが強制的に喉を通っていく。「げほっげほっ!!」
吐き出そうとするが天ボボに顎を掴まれて阻止される。「ちゃんと全部食べるまで許しませんよ。」
そう言って天ボボは再びOVERにステーキを食べさせた。それから何回も同じ事を繰り返し、ようやく完食することができた。「よくできました。」
天ボボは満足げに言うと食器を下げに行く。その間にOVERは大きく息を吐いた。(クソッ、最悪だ……)
自分の無力さを痛感しながら彼は唇を噛むことしかできなかった。END※OVER編終わり 【次回予告】
次回は天ボボ視点でのお話を投稿予定です。
「どうも皆さんこんにちは。天ボボです。」
今回は僕視点の話なので、いつもより短めになります。ご了承下さい。