筆頭者の男 私はそのメールを神妙な気持ちで開き、accept、の文字を見て、ほっと一息ついた。投稿してから半年以上、ずいぶん長く待たされた。そのあいだに前期は終わってしまい、私は彼に何の報告もできないままだった。エディターからは翌々月の雑誌に掲載する、という旨が簡潔に書かれていた。私はプアイングリッシュでそれに対する例を書いた。彼のことに触れようかと思ったが私の語学力ではどうにもセンシティブな問題には触れられない。ありきたりのメールを送信し、同時にラボのメーリングリスト(大学というものはいまだにメーリングリストが十分に機能している)に採用の知らせを送った。すると机に置きっぱなしのスマートフォンが学生や院生、助手たちからのLINEでぶるぶる震える。ここ数年でコミュニケーションはだいぶフランクになった。私はそういう距離感は嫌いではない。なにせ船の上で二ヶ月三ヶ月顔を合わせ続けるのだ、しかつめらしい態度をとっていてもしょうがないではないか。
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