惇平と昌太の正月「惇兄、起きて」
「ゔーん……あと五分……いや五時間」
「どんだけ寝るつもりなんだよ」
朝日も昌太もうるさい、眩しい朝だ。スマホに指を滑らせれば、まだ午前九時。寝坊というには早すぎるだろう。鳥ですら囀りをさぼっている。
「正月くらい休ませてくれよー、ブラック企業にとっての貴重な休みなんだよー!」
「わかってるけど、身体鈍る」
せっかく鍛えてたのに衰えていく一方じゃ勿体ないでしょ、と言うのが、弟の言い分だった。うるさいうるさーい!ブラック企業は体力勝負なんじゃい!衰えてなんかいないやい!
「せっかくだから、初詣行かない?」
「……サンタが行っても怒られないかな」
「平気でしょ、そんくらい。そしたら日本中のお父さんとお母さん、行けなくなる」
「確かに」
役目を終えた全てのサンタクロースたちは、ゆっくり休めているだろうか。サンタの夢を見た子供たちは、新しい年を健やかに迎えられただろうか。
「……そんじゃ、祈るとしますか」
「何を」
「世界中のしあわせを!」
また変なこと言ってる、と肩を落としなら笑う昌太の健康も祈ることは、秘密にしておこう。
雲ひとつない晴天は、一日中続いた。晴れやかな新年のはじまり。