魔法学校パロ 羊皮紙三枚分のレポートを何とか書き終えて、大きく背中を伸ばす。ほのかに香るインクの匂いは、自分の手元以外からも漂ってきているのだろう。談話室はいつもより人が多く、あくびの音も大げさなほど聞こえてくる。この時期は仕方ない。レポートにテストに、毎日やることはみっちり詰まっているのだ。
「オイチビ! 何でこんなとこにいやがる!」
「今日はレポートやるって言ってただろ……」
談話室全体がピリつくのが分かる。羽ペンを片付けながら見上げると、箒を掲げながら仁王立ちするアイツがいた。
「勝負するっつったろ」
「言ってないし、そんな暇ない」
オマエだってレポートまだだろ、ただでさえやるのが遅いんだから何とかしろ……そう言ったところで、コイツがやらないのは目に見えている。
コイツは何もかもめちゃくちゃだ。実技系の試験は軒並み成績がいい、クィディッチの活躍も目まぐるしい、だからこそ様々なことを免除されたり、目をつむってもらっている――監督生でもないのに。情けないやら羨ましいやら、ただ俺にできることはとにかくたまっているレポートを片付けることだけだ。
「こないだの試合でオマエがヘナチョコな動きしやがったから点差が縮んだじゃねーか」
「それはオマエだってそうだろ。もっとリーダーの指示を聞けって、いつも言われてる癖に」
溜息をつきながら、レポートを丸めてカバンにしまう。コイツにぐしゃぐしゃにされでもしたら、せっかくの苦労が水の泡だ。俺もどちらかと言えば実技系の授業の方が得意だ。本に向かうと、どうしても瞼が落ちてきてしまう。
「ここで大声をだすと迷惑だ。食堂に行くぞ」
「命令すんじゃねー! おい!」
がなるアイツを連れて、談話室を出る。暖炉のそばから離れた途端、身体が大きくぶるりと震えた。ああ、俺の平穏が崩された。コイツは勝負するまでずっとこのままうるさいだろうし、コイツに付き合っている間、俺はテスト勉強が捗らない。テストの結果が散々であれば、クィディッチ出場だって危ぶまれる。負の連鎖だ。俺は何とかコイツを説得することを試みる。