『あのコはツンデレ』
「そりゃまたマニアックなとこに……」
と、電話口で聞いた同僚の言葉の真意を、ゾロはだいぶん後から知ることになった。
気に食わない金髪頭を思い出しながら、一体誰のせいで……と内心ぶつくさ、「さっさと来いよ」と念を押す。
同僚は頷き「ああそれなら」と続け、ゾロにあるひとつの名前を挙げた。
「絶対ェお前のタイプだから」
そんな、確信に満ちた声音を残して。
ゾロは今、『ボア』という喫茶店の前にいる。
同じプロジェクトを担当しているさっきの同僚、名をサンジというのだが、彼と得意先へのプレゼン帰りだ。
結果は大勝利。サンジは大口の契約がとれたせいかたいへん機嫌がよく、「おれちょっと行く所あるから、お前先に帰ってていいよ」とゾロに言った。が、ゾロは極度の方向音痴である自覚が残念ながらなかったので、まんまと道に迷ってサンジに泣きつく羽目になる。
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