〇『素晴らしい副寮長』
リドルが寮長会議の場でトレイのことを自慢していたとヴィルから初めて聞いた時、正直満更でもなかったのは本当だ。褒められて嬉しくない人間というのも稀だろう。リドルは元来、能力のある人間に対しては素直に認め言葉にすることが出来る男だった。トレイに対しても、副寮長としての能力を買ってくれているのだろうことは間違いない。――それは非常に誇らしく喜ばしいことなのだが。
おやつを手に寮長の部屋をノックすると、「どうぞ」と少しかすれ気味の声が返ってきた。何かあったのだろうか。風邪か?心配になりすぐ部屋を開ける。あくまでも平静は装いつつ、「リドル、大丈夫か?おやつ持ってきたけど食べるか?」と声をかける。
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