しん、と静まり返った雪の夜。
積もったばかりの新しい白を踏む音が、ふたつぶん。
頬を撫でる空気の冷たさが、より一層、もうひとつの温もりを心地よく感じさせる。
「この寒い中、なんで手袋も持ってこないのさ」
半ば呆れ顔の金髪の青年に、「だって忘れちゃったんだもん」と、焦げ茶の髪の娘が笑う。
彼女の右手にしっかりと付けられている黒の手袋は、もちろん彼女のものではない。
片方の手は手袋、もう片方の手にはお互いの手を持って、サクサクと軽快な音を立てて歩いて行く。
「あ!あの星すごい明るい!」
指さした先で、小さいながらも確かに光を発するその星は、今はもう、とっくに無くなっているのかもしれない。
生きていた、と言う証のみを放って、後は消えていくだけなのかもしれない。
それでも、ふたりが今この光を共有しているのは事実で、だからつい、叶いもしないはずの事を願う。
ずっとそばに居たい、と。
その不確定な眩さ故に願うのだ。
全ての音を吸い取ってしまう、真っ白な世界で、その願いはきっと、星だけが聞いていた。