夜明けを待ち望む日 濃藍が空に溶け込む頃、薄らと瞼を開けた。大きなベットの中央で背を向ける男の姿を見つめ、すうっと心に隙間風が吹き込む。
そっと手を伸ばしてぺたりと大きな背中に手のひらをくっつける。人肌のじんわりとした温もりが確かな熱を帯びて伝わった。
静かな寝息が聞こえ、ほんの少しだけ距離を詰める。起きないことに安堵して息を吐く。
情事後の身体は綺麗になっていて、ふわふわの毛布に包み込まれている。なのに温もりは感じられない。手のひらから伝わる温度だけが暖かい。
獰猛な獣を体現したかのような彼が僕に触れるとき、酷く怯えているのを知った。
まるで触れてはいけないモノのように微かに震える手で僕の身体に触れる。華奢であるが筋肉のついた男の身体はそう簡単に壊れやしないというのに、彼はいつだって僕に触れることを躊躇い、丁寧に扱う。
2736