図書館兎と霧の国 本から立ち昇る霧の中、アリスは少女らしかぬ傲慢な顔で烏と早乙女を嗤った。
「神様以外のことはどうでもいいの。家族だってどうなってもいい。邪魔だったから、ロリーナにも蛇を産む器になってもらった。イーディスは、幼すぎて駄目だったみたいだけど」
少女の唇から紡がれる冷酷な言葉に嫌悪感が膨らむ。早乙女の予想が正しければ、ロンドンを這い回っていた蛇は蛇病に罹っていた女性が産み落としたものだ。中にはロリーナが産んだ蛇もいるかもしれない。
「もうやめなさい、アリス」
烏が宥めるように声を出す。命令されたとでも思ったのかアリスは怒りで目を見開き、女王の威厳を持って立ち上がった。
「黙りなさい!この本には全部書いてあるの。過去のことも、未来のことも。ロンドンを霧でいっぱいにして神様を呼べば、私は全ての未来を知ることができるのよ」
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