明日への星 競技場の廊下にひと影を見た。
なんだと思い近寄ってみれば、そこに槙村が立っていた。
目があって、秋山は瞬く。
試合が終わって1時間ほどが経っていた。帰り支度を早々に済ませて、手洗いにいこうとロッカールームを出てきたところで槇村に出くわした。
あたりにほかにひとけはない。学校指定のジャージに厚手のコートを羽織り、槇村はひとりそこに立っていた。
よう、と言えば無言で肩をすくめられる。その顔は険しい。試合前に高杉が、槇村に声をかけようとして拒まれたと話していたのをふと思いだした。
二年まえに別れたときより、槇村の体格はずいぶんと分厚くなっている。昔の姿を一瞬そこに重ねかけて、秋山は眉根をあげる。中学生と高校生では何もかもが様変わりしているだろうし、それはきっと自分もおなじことだった。
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