柳さんの結婚相手を調査する話(阿+柳)「阿藤さん。私、結婚するんです」
客数の割に静かなので、仕事でもよく使う喫茶店の片隅で。
微笑んだ柳は文字通り、花のように見えた。
「それは本当に、おめでとうございます」
迷うことなく祝いの言葉を口にする。ここは躊躇う理由がない。父は邪推していたが、自分と彼女は友人だ。あの事件を超え、最愛の恋人を失ってもなお歩き続けた強い人。そんな彼女が新たな道を歩み出すなら、祝福しない理由がない。
このまま彼女が相手の人柄や出会いについて話し出したなら、喜んで傾聴しただろう。だが会話は不自然に途切れた。明らかに何か言いたげだが躊躇っている様子に、仕方がないと口を開く。
「……違っていたらすみません。依頼内容は、結婚相手の身辺調査ですか?」
1961