探囚再掲④ 興味深いことがあると途端に輝きを増す瞳だとか、工具やペンを手にして休むことなく働く、少しかさついた肉付きの悪い手だとか、大して手入れもしていないのに、触り心地の良い髪の毛だとか。
「好きだなあ」
「え」
突然素っ頓狂な声を上げ、目をぱちぱちと瞬かせているルカに、首を傾げて尋ねる。
「どうかしたの?」
「ぁ、いや、なんでもないよ。そう、今思い付いたことがあって……うん、そうだな。忘れないうちに書き留めてきたいから、失礼しても?」
「ああ、うん。いってらっしゃい」
度々記憶を無くしては、いい考えが浮かんでいたのにと悔しがっている彼だ。
今にも忘れてしまいそうで不安なのか、どうやら落ち着かないようだし、ここは文句を言わずに送り出してやるべきだろう。
勿論、名残惜しくはあるが。
「すまないね。埋め合わせは、その、また今度でも」
気にしないで、と言いかけたところで、彼の様子のおかしさに気付く。
早く部屋に戻ってメモをしたそうだ、というだけでは、どうにも説明が付かない。
心ここに在らずというよりは、むしろ、ノートンと視線を合わせないようにしているような、そんな気がする。
ああして言葉を詰まらせるのも、彼にしては珍しい。
よく見ると、日焼けしていない肌に赤みが差していて、そうなると先程の言葉も、早く部屋に帰りたいというより、早くノートンの前を去りたいが故の発言に聞こえてきて、もしかして。
「もしかして、僕、さっきの声に出してた?」
「え、あぁ……いいや! 私は何も聞いていなかったとも! では失礼させてもらうよキャンベル君!」
「それちゃんと聞いてた人の反応だよね!? あぁクソこういう時だけ逃げ足速いな! こうなったら100秒でも200秒でもチェイスしてやるから!」
気まずそうな、それでいて僅かに恥じらうような表情から一転、私から離れて! とでも言わんばかりの追い詰められた表情を見せ、「君、いつからハンターになったんだ」と情けない声を上げながら逃げるルカの背中を全力で追いかける。
さっきまで赤く目を光らせたハンター達から逃げ惑っていたことを思えば、この程度の鬼ごっこは児戯に等しい、
無意識のうちにこぼしたものとはいえ、告白めいた言葉を受け取らず、あんな表情だけ見せておいて、まさか逃げられるとでも思っているのだろうか。
まあ、突然のことで驚かせてしまった訳だし、猶予ぐらいは与えてやってもいい。
けれど。
「絶対逃がさないから。僕が追い付くまでに覚悟決めてよね、ルカ」