「好きだよ」と言われて、先生に呼ばれた生徒のように元気よく、大きな声で「はい!」と応えたのは少し前の話。いやいや点呼じゃないんだから……と、思い出すたびに晶は自室だろうが廊下だろうが頬を火照らせて呻き声を上げていた。
あれはフィガロの箒に乗って中央の国の市場に向かっていたときの出来事だった。空を飛ぶことにも慣れてきた晶が、川の中を覗き込むような調子で眼下の町並みを眺めていたときに、まるで「いい天気だね」と語りかけるかのようにさらりとフィガロが告げたのだ。
「君が好きだよ」
あまりに前触れもなく、それまでの会話の脈絡を無視した普段通りの口調に、晶は「はい」と返した。ほとんど反射的に応えていて、何も考えていなかった。「え?」は遅れてやってきた。
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